抄録
茨城県多賀山地の日立変成古生層は,産出化石により前期石炭紀以降の地層とされてきた.しかし最近広範にSHRIMP年代が測定され,多賀山地に日本最古のカンブリア系が60 km2以上にわたって広く分布することが明らかになった.A班では,原岩構造のわかるカンブリア系のうち,枕状構造や発泡構造,急冷組織などがみられる火山岩を原岩とする赤沢層と,堆積構造を残す砂泥質堆積岩や礫岩を原岩とする西堂平層,さらに赤沢層に貫入するカンブリア紀花崗岩類を見学する.また,赤沢層を不整合で覆う石炭系大雄院層基底部の礫岩などを見学する.今後,これらの露頭は日本におけるカンブリア系の模式地となることが予想される.今回は当初の研究成果に基づくものであり,今後さらに多くの研究者によってより深く研究され,日本列島形成の初期の様子が明らかになるであろう.