地質学雑誌
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117 巻, Supplement 号
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日本地質学会第118年学術大会 2011年 水戸 巡検案内書
  • —日立のカンブリア系変成古生層
    田切 美智雄, 廣井 美邦, 足立 達朗
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S1-S20
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    茨城県多賀山地の日立変成古生層は,産出化石により前期石炭紀以降の地層とされてきた.しかし最近広範にSHRIMP年代が測定され,多賀山地に日本最古のカンブリア系が60 km2以上にわたって広く分布することが明らかになった.A班では,原岩構造のわかるカンブリア系のうち,枕状構造や発泡構造,急冷組織などがみられる火山岩を原岩とする赤沢層と,堆積構造を残す砂泥質堆積岩や礫岩を原岩とする西堂平層,さらに赤沢層に貫入するカンブリア紀花崗岩類を見学する.また,赤沢層を不整合で覆う石炭系大雄院層基底部の礫岩などを見学する.今後,これらの露頭は日本におけるカンブリア系の模式地となることが予想される.今回は当初の研究成果に基づくものであり,今後さらに多くの研究者によってより深く研究され,日本列島形成の初期の様子が明らかになるであろう.
  • 高橋 裕平, 宮崎 一博, 西岡 芳晴
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S21-S31
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    筑波山及びその周辺地域の山塊には深成岩類と変成岩類が分布している.深成岩類からは古第三紀初期の放射年代が得られ,また,その岩石学的性質や関連鉱床との関係から西南日本内帯の領家帯及び山陽帯の深成岩類の延長と考えられている.変成岩類は,その原岩がジュラ紀末-前期白亜紀堆積物と考えられ,白亜紀末から古第三紀初期に高温低圧型の変成作用を受けたものである.筑波山塊北の花崗岩類は良質な石材として国会議事堂をはじめ日本の多くの建物で利用されている.
  • 長谷川 健, 藤縄 明彦, 伊藤 太久
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S33-S48
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    福島県の中北部で互いに隣接する磐梯・吾妻・安達太良の三火山は,いずれも活火山である.気象庁による「ランクB」に位置づけられてはいるものの,それぞれ明治時代に,死者を出す噴火災害を起こし,潜在的噴火リスクは決して少なくない.本巡検では,歴史時代から数十万年前にまで遡った形成史の中で火山災害を捉える,という視点から,これら三火山の特徴的な地形および噴出物を観察してみたい.
  • 安藤 寿男, 柳沢 幸夫, 小松原 純子
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S49-S67
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    東北日本太平洋岸の常磐地域は,白亜紀後期から新第三紀の前弧堆積盆西縁の河川−浅海−陸棚−大陸斜面相が比較的単純な構造で累重する地域である.古第三系中の石炭は常磐炭田として1970年代まで採鉱されていたため,この地域では詳細な地質図が作成されており,研究も蓄積されてきた.その後も微化石層序に基づいた年代層序が確立され,北西太平洋の新第三系層序の模式的地域の一つとなっている.本巡検では,上部白亜系双葉層群,古第三系白水層群,新第三系の湯長谷(ゆながや)・白土(しらど)・高久(たかく)・多賀・仙台層群の代表好露頭において,堆積相・堆積構造や化石相を観察し,それらの累重・層序関係を把握することで,常磐堆積盆における堆積作用や古生物相・古環境変遷を考察する.特に,多賀層群の海底チャネル群や,五浦海岸の高久層群中に発達する炭酸塩コンクリーションと化学合成群集は,太平洋岸の前弧堆積作用を特徴づけるものとして注目される.
  • 天野 一男, 松原 典孝, 及川 敦美, 滝本 春南, 細井 淳
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S69-S87
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    棚倉断層は新第三紀に日本列島形成に大きく関わって活動した大規模な横ずれ断層であり,断層沿いに多くの横ずれ堆積盆が発達する.その堆積盆内では断層の活動と海水準変動により堆積環境は,湖沼→河川→浅海→深海へと変化した.また,日本海の拡大と関連して活動したデイサイト質水中火山も存在する.本地域は日本列島の新生代テクトニクスを考える上での要の地域の一つである.本見学旅行では,横ずれ断層の運動に伴って形成された堆積盆内の堆積環境の変遷と火成活動を中心に観察する.
  • 松居 誠一郎, 山本 高司, 柏村 勇二, 布川 嘉英, 青島 睦治
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S89-S102
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    荒川層群は栃木県東部の八溝山地に沿って分布する海成中新統である.近年、微化石や放射年代の研究が進展し,本層群は中・上部中新統であることが明確になった.また豊富に産出する貝化石について古環境復元や生物地理的研究が行われている.一方,宇都宮市周辺には,やはり中新統である火砕岩類とその上位の海成堆積物が観察される.このうち火砕岩類は大谷石として有名で,優れた耐火性などのため石材として重用されてきた.一方で,採掘跡の陥没・産業廃棄物投棄に伴う地下水汚染等の地盤災害が問題になっている.こうした問題に対処するため,最新の物理探査手法による採掘跡地の調査と,地震計による安全確保のためのモニタリングが継続されている.今回の見学旅行では,貝化石の多い荒川層群中部において化石の産状を観察し,また大谷石採掘現場で陥没などの調査状況を見学し,採掘跡地におけるボーリングのコア試料を観察する.
  • 大井 信三, 横山 芳春
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S103-S120
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    茨城県中・南部の常陸台地を構成する下総層群は,これまで房総半島の模式層序との対比が確立されておらず,地域内でも研究者によって様々な見解があり,異論が多かった.そこで新たに見いだされたテフラを広域に追跡することでテフラ層序を組み立てて,それを基準として堆積相解析やシーケンス層序学的解析を行った.その結果,下総層群を藪層,上泉層,清川層,横田層,木下層,常総層の6層を区分した.さらに,最終間氷期の堆積物である木下層に2つの堆積サイクルを認め,剣尺(けんじゃく)部層,行方(なめかた)部層を新たに設定した.本巡検では常陸台地における下総層群の各構成層について,案内者らの見解を紹介し,模式層序との対応を解説,議論する.さらに,テフラと堆積相の分布から推定される,木下層の堆積過程について概説する.特に堆積物供給量の違いを背景として,涸沼(ひぬま)を境界として南北で異なる堆積システムの時空変化について,常陸台地を縦断して比較を行う.
  • —火山噴火史と平野の形成史—
    鈴木 毅彦
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S121-S133
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    関東北部から上信越にかけては,日本列島のなかで最も第四紀火山が密に分布する地域である.これらの第四紀火山の多くは爆発的噴火を繰り返してきたため,その東方域である鬼怒川低地帯には多数のテフラが堆積している.このため,同地域は火山噴火史の構築に適した地域となっており,同時に複数の火山の噴火史を比較することができる.一方,同低地帯には火山活動,地殻変動,さらに気候変化・海面変化等の古環境変化の影響を受けて形成された段丘,丘陵,第四紀層が顕著に発達する.それらはテフラを用いて詳細に編年することができる.本コースでは,鬼怒川低地帯の第四紀テフラの観察を通じて,火山噴火史と平野の形成史などをひろく紹介する.
  • 小田原 啓, 林 広樹, 井崎 雄介, 染野 誠, 伊藤 谷生
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S135-S152
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    神奈川県西部から静岡県東部にかけての地域は,伊豆弧と本州弧の衝突帯に位置し,様々な活構造が分布する.特に神縄断層や国府津-松田断層,およびそれら断層によって分布を規制される更新統の足柄層群については,伊豆弧衝突の最前線として,島弧衝突帯のテクトニクスに関する様々な研究成果が報告されてきた.近年,大規模な地下構造探査プロジェクトにより,この地域のプレート構造について新たな知見が得られ,再び注目を集めている.本見学旅行では,本地域に分布する活断層の露頭や足柄層群に挟在される火砕流堆積物を見学し,本地域の衝突テクトニクスに関して議論する.
  • 伊藤 孝, 植木 岳雪, 中野 英之, 小尾 靖, 牧野 泰彦
    2011 年 117 巻 Supplement 号 p. S153-S166
    発行日: 2011/09/01
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    野外観察授業の重要性は従来から指摘されているにもかかわらず,準備・実施のための時間や予算の不足,観察物(露頭・動植物など)の減少などの諸要因から,近年,その実施は益々難しくなっている.ここでは野外観察授業の代替として,地層のはぎ取り標本の作製,簡易水路を用いた堆積実験,およびそれらの授業での活用方法について紹介する.また,野外での地層の成り立ちを理解した上で,地層のはぎ取り標本の活用や簡易水路を用いた堆積実験を行えるよう,鹿島灘の北端にあたる大洗海岸の現世の地形・地層,東茨城台地を構成する更新世の海成段丘・河成段丘の地形・地層の観察を併せて行う.
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