2012 年 118 巻 10 号 p. 632-649
風成砂丘は,地球以外の惑星(火星や金星)や衛星(タイタン)の表層にも普遍的に見られる.本研究では,火星およびタイタンの大気循環系と,風成砂丘の配列方向から推定される卓越地表風系とが,どの程度整合的なのかを比較検討した.その結果,火星の砂丘の配列方向から推定される風系は,現在の火星に卓越する北半球の冬の風系と調和的であった.また火星の砂丘の分布域も大気循環と密接に関係し,ハドレー循環の下降域に当たる高緯度域の,高気圧帯に沿う地域に分布していた.一方,タイタンの砂丘の配列方向から推定される風系は,大気循環および定常的な風系とは一致せず,春分・秋分の一時的な強い風系を反映していた.しかし,タイタンでも砂丘の分布域は大気循環を反映していた.したがって風成砂丘の配列方向だけでは十分でない可能性があるが,砂丘の分布なども含め多角的に検討することで,惑星や衛星系の大気循環の復元も可能になると考えられる.