地質学雑誌
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118 巻 , 10 号
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特集 火星探査計画における地質学者への期待
総説
  • 小松 吾郎
    2012 年 118 巻 10 号 p. 597-605
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    近年の火星探査は,取得データの質と量の飛躍的な向上で特徴づけられ,高解像度リモートセンシングや露頭のデータが例として挙げられる.この延長としての将来の探査計画は,生物探査を視野に入れた地質環境精査が目標であるが,サンプルを地球に持ち帰り詳細分析をする計画もある.大量かつ質の良いデータは,地球の地質を研究してきた地質学者たちの火星研究に寄与する可能性を高めた.これは,彼らの経験や研究しているフィールドの特性が,火星の地質の変遷や地形形成の理解に貢献するという前提による.火星の表面の作用は,地球のそれと共通している面があり,様々な地球の類似地質・地形が火星研究に役立てられてきた.極域や大陸内部の砂漠など寒冷,乾燥している場所が多いが,特定の地質作用が観察される衝突クレーターや火山などのフィールドもある.現在まで,日本を含むアジア地域は惑星地質学研究においてはほとんど活用されてこなかったが,この地域の多種多様な地質や地形は,火星との比較対象として今後大きな役割を果たす可能性を秘めている.
  • 並木 則行, 小松 吾郎, 臼井 寛裕, 杉田 精司, 宮本 英昭, 久保田 孝, 石上 玄也, 出村 裕英, 岡田 達明, 三浦 弥生, ...
    2012 年 118 巻 10 号 p. 606-617
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    将来火星着陸探査計画として,われわれは探査車(ローバ)による地質調査を提案している.米国,ロシア(旧ソ連),欧州による軌道上からの,あるいは複数の着陸点での観測から,火星は非常に多様性に富む天体であり,複雑な物理・化学過程が表層の地質に影響を与え続けてきたことが明らかとなっている.ローバを使った化学組成分析や同位体測定では火星隕石の収集とは異なり,地質現象の時間的変遷を追うことが出来るので,複雑性を解明することに役立つ.観察対象は堆積岩と火山岩に大別され,それぞれ異なる科学目標を有する.堆積岩調査は米欧の火星探査の流れに沿う方向であり,国際協調による科学成果の向上が期待できる.一方,火山岩調査は日本の独自性の高い選択である.現段階ではいずれの方向を選択すべきか決まっていないが,堆積岩調査にせよ火山岩調査にせよ,大型プロジェクトとして広範な地球科学者の評価と支持を得ることが必要である.
  • 後藤 和久, 小松 吾郎
    2012 年 118 巻 10 号 p. 618-631
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    近年の衛星画像の精度向上などにより,火星の堆積岩に関する研究が急速に進展している.火星には,水の作用により海や湖,バレーネットワーク,アウトフローチャネルが形成された痕跡がいたるところに残されており,気候変動を含む火星史を理解する上で極めて重要である.実際に,ノアキス紀の古クレーター湖の壁面の堆積岩露頭には,フィロケイ酸塩鉱物のような粘土鉱物が豊富に含まれることがわかっている.こうした堆積岩は,アメリカやヨーロッパの宇宙機関の火星探査の着陸候補地点となっており,水と生命の痕跡を発見するための重要な研究対象とみなされている.2011年11月には,アメリカ航空宇宙局の最新探査機が打ち上げられ,古クレーター湖中の露頭を対象として地質調査を行なう予定である.こうした将来探査計画の中で,地質学者の知識と経験が大いに有効であり,惑星地質学分野での貢献が期待される.
  • 長谷川 精
    2012 年 118 巻 10 号 p. 632-649
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    風成砂丘は,地球以外の惑星(火星や金星)や衛星(タイタン)の表層にも普遍的に見られる.本研究では,火星およびタイタンの大気循環系と,風成砂丘の配列方向から推定される卓越地表風系とが,どの程度整合的なのかを比較検討した.その結果,火星の砂丘の配列方向から推定される風系は,現在の火星に卓越する北半球の冬の風系と調和的であった.また火星の砂丘の分布域も大気循環と密接に関係し,ハドレー循環の下降域に当たる高緯度域の,高気圧帯に沿う地域に分布していた.一方,タイタンの砂丘の配列方向から推定される風系は,大気循環および定常的な風系とは一致せず,春分・秋分の一時的な強い風系を反映していた.しかし,タイタンでも砂丘の分布域は大気循環を反映していた.したがって風成砂丘の配列方向だけでは十分でない可能性があるが,砂丘の分布なども含め多角的に検討することで,惑星や衛星系の大気循環の復元も可能になると考えられる.
  • 関根 康人
    2012 年 118 巻 10 号 p. 650-663
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    近年の周回探査機による高解像度リモートセンシングデータや,着陸機による鉱物・化学組成のその場分析により,火星には1000を超える水に関連した堆積物層の露頭が存在することが分かってきた.これら露頭の鉱物・化学組成の解析により,火星の古環境変遷の概要が明らかになりつつある.約43−40億年前の火星では,地下もしくは表層での中性−塩基性の水と玄武岩との化学反応により,粘土鉱物や炭酸塩岩が形成していた.その後,約40−32億年前には,強酸性の表層水が蒸発する際に沈殿する硫酸塩岩やシリカ水和物の存在で特徴付けられる,酸化的かつ乾燥した表層環境に変化してきた.また,これ以降の時代では,液体の水は火星上の堆積物の形成において主要なプロセスではなくなった.本稿では,火星上に見つかった堆積物層の特徴やそれらの起源,環境変動を引き起こした原因,新たに浮かび上がった環境進化に関する謎や課題について議論する.
  • 石丸 亮, 小松 吾郎, 松井 孝典
    2012 年 118 巻 10 号 p. 664-674
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    火星大気中にメタンが存在していることが4つのグループの火星探査機観測及び地上望遠鏡観測から報告されている.いずれの観測も固有の問題を抱えているが,異なる観測機器・条件であっても調和的な結果(季節変動,全球平均量など)が得られている。このことはメタンの存在が確からしいことを示唆している.火星のメタンの起源は,地下での非生物の地質作用,生物活動,または両者の組み合わせが有力であると考えられているが,現状では十分な証拠が得られておらず未だ火星科学最大の謎の一つとされている.一方,メタンが大気に放出される際には,地球同様,泥火山のような特徴的な地形を伴う可能性がある.そのような地形は火星上で見つかっているが,メタンとの関連は明らかにされていない.本稿では,火星のメタンの観測やこれまで提唱されているメタンの生成・放出・消費過程を紹介するとともに,それぞれに残された課題と今後の展望について解説する.
  • 山岸 明彦
    2012 年 118 巻 10 号 p. 675-682
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    これまでの欧米の火星探査は「水を探せ」が合い言葉であった.しかし近年,「生命のしるしを探せ」に探査の目標が変わりつつある.NASA/ESA MSLでは生命関連の分子を質量分析装置と波長可変レーザー分光光度型を用いて探査する.ExoMarsでは,抗体を用いた装置で有機物と生命関連分子を探査する計画である.
    それに対して,日本のMELOS計画の一部で準備を進めている生命探査計画(JAMP: Japan Astrobiology Mars Project)では,火星表面付近数センチメートルの土壌から,蛍光顕微鏡を用いて微生物細胞を検出しようという計画である.火星におけるメタンの発見,および地球微生物の研究から,火星表層付近にもメタンを酸化する菌(メタン酸化菌)が現在も生育している可能性があるのではないかと考えている.適切な蛍光色素を選択することによって,地球生命とはかなり異なった性質を持つ細胞であっても,蛍光顕微鏡で検出可能であろうと推定している.
ノート
  • 後藤 和久, 小松 吾郎, 齋藤 仁
    2012 年 118 巻 10 号 p. 683-688
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    A large amount of satellite imagery is now available for the surface of Mars; this imagery has spatial resolutions up to 25 cm/pixel, and a Digital Terrain Model (DTM) has been constructed to allow the analysis of Martian topography. These data are important for studies of geological and geomorphological processes on Mars, and may form the basis of future Mars exploration plans. Nevertheless, the procedures used to obtain these data and to project them using Geographic Information Systems (GIS) is significantly complicated, and this prevents many researchers from initiating geological or geomorphological research on Mars. Here, we introduce the procedures required to obtain Martian satellite imagery and topographic data, the methods used to project these data into GIS systems, and a simple Google Mars-based image analysis methodology. After projection, GIS-based data analytical approaches are similar to those commonly used for Earth-based data; consequently, geologists and geomorphologists who usually focus on terrestrial problems could easily shift their research focus to Mars, significantly improving the state of satellite imagery and topographic data-based Martian research and potentially contributing to future Mars missions.
  • 大野 宗祐
    2012 年 118 巻 10 号 p. 689-693
    発行日: 2012/10/15
    公開日: 2013/02/20
    ジャーナル フリー
    Recent Martian exploration missions have supplied detailed geological data from the surface of Mars. This has lead to an increase in the importance of Mars environmental simulation experiments as tools to interpret these newly acquired data. The recreation of the Martian surface atmosphere in environmental simulation chambers is essential for experimental studies to determine the geological and/or astrobiological processes that operate on Mars. Environmental simulators are also important to investigate and develop instruments for scientific observation during missions to Mars. Here, we introduce details of a general-purpose Mars environmental simulation chamber developed in the Planetary Exploration Research Center of the Chiba Institute of Technology (PERC/Chitech). The chamber can simulate the temperatures, pressures, and chemical compositions encountered within the Martian lower atmosphere.
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