地質学雑誌
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論説
千葉県九十九里浜の天然ガス(上ガス)の湧出する潮溜まりの白濁現象
吉田 剛風岡 修竹内 美緒楠田 隆古野 邦雄香川 淳酒井 豊
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2012 年 118 巻 3 号 p. 172-183

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抄録
2007年5月,8月に千葉県九十九里浜において潮溜まりが白濁する現象が起こった.この周囲には,メタンガスが湧出していた.そのガス湧出範囲の内側には,還元色を呈する濃青灰色砂が分布し,さらにその内側には黄色地下水が存在することがわかった.黄色地下水が潮溜まりに湧出したときに白濁することがわかった.
化学分析から,白濁物質は硫黄が主成分と判明した.白濁のメカニズムは青潮と同様に多硫化物イオンや硫黄のコロイドによる乱反射が示唆された.
黄色地下水からは嫌気的メタン酸化古細菌のANME-1が検出されたことから,黄色地下水が硫酸還元状態にいたる過程の仮説として,水溶性天然ガスを包含する上総層群から砂層や断層を通じて地表へ上昇するメタンガスに沿って,嫌気的メタン酸化古細菌と硫酸還元菌が活動し,嫌気的メタン酸化反応を生じ,地下の還元環境が海浜まで達しているメカニズムを提案した.
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© 2012 日本地質学会
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