地質学雑誌
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総説
東北沖超巨大地震とプレート沈み込み帯のマルチ地震サイクル
松浦 充宏
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2012 年 118 巻 5 号 p. 313-322

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抄録
プレート境界地震を引き起こす応力は震源域でのすべり遅れの増大に伴って蓄積される.地震間のすべり遅れに起因する地殻変動をGPS観測網で捉えて逆解析することで,南千島−日本海溝沿いのプレート境界には5つの顕著なすべり遅れ領域が存在することが確認されていた.一方,東北沖超巨大地震に伴うGPS変位データの逆解析から,この地震の断層すべりは宮城沖と福島沖の2つのすべり遅れ領域に及んでおり,最大すべり量は宮城沖で25 m,福島沖で6 mに達すると推定された.宮城沖のすべり遅れ領域では,過去200年間以上にわたり,M 7.5クラスの地震が40年間隔で繰り返してきた.その同じ領域でMw 9.0の超巨大地震が発生したことは,スケールに依存するマルチ地震サイクルの可能性を示唆すると同時に,これまで物理的実体とされてきたアスペリティが断層摩擦特性の空間的不均一を表す概念に過ぎないことを意味する.
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© 2012 日本地質学会
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