地質学雑誌
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総説
内陸地震の長期評価に関する課題と新たな視点
遠田 晋次
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2013 年 119 巻 2 号 p. 105-123

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抄録
1995年兵庫県南部地震以降,地震発生確率の低い地域で内陸被害地震が続発した.この事実は,活断層の調査結果を反映した確率予測図が必ずしも有効に機能しているわけではないことを示す.そのため,著者1923年以降の内陸地震と地震断層出現率を再検討した.その結果,震源の把握につながる地震断層の出現率はM6.5以上で20%,M7.0以上で44%となった.したがって,地震断層の同一パターンの変位の累積が活断層と等価であると仮定すると,活断層情報のみによる地震評価に過小見積もりが生じる.また,既知の活断層と確率値からの計算でも,観測された地震数の2–7割程度までしか再現できず,多数の活断層が潜在する可能性がある.一方,活断層分布・内陸地震には顕著な地域性や偏在性がある.これは断層成熟度や応力解放システムの違いを反映し,地震発生の時系列的特徴までもコントロールする.地震サイクルの理解が進んでいる海溝型地震では更新過程を考慮した確率算定が有効だが,内帯では活断層情報だけではなく広域地殻変形等を考慮した確率算定が必要であろう.
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© 2013 日本地質学会
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