地質学雑誌
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論説
北海道東部厚岸沿岸低地の完新世バリアーシステムと海水準変動の復元
重野 聖之七山 太須藤 雄介嵯峨山 積長谷川 健安藤 寿男
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2013 年 119 巻 3 号 p. 171-189

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抄録
北海道東部沿岸,厚岸湾沿岸地域には,日本では珍しい現在でも活動的なバリアーシステムが存在している.その成立過程と現存する理由について,ボーリング試料を用いて堆 積学的手法,古生物学的手法ならびに炭素同位体年代を用いて検討した結果,以下の3点が明確となった.(1)厚岸湾沿岸低地に後氷期海進が到達したのが11400年前である.この当時の海面の高さは現在より50 m低かった.その後の後氷期海進によって,厚岸バリアーシステムが成立したのは8800年前であり,現在もバリアーシステムは維持されている.(2)厚岸低地においてバリアーシステムが現在も地形的に維持されている理由としては,5500年前から続く海面の停滞の影響が大きく,この時期に厚岸湖のカキ礁も上げ潮三角州上に 生成し始めたものと推測される.(3)現在のバリアーシステムが地形的に明瞭であるのは, 17世紀の巨大地震以降の1 cm/年に達する急激な地震性沈降による影響が大きい.
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© 2013 日本地質学会
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