抄録
山陰帯島根県奥出雲町に産する阿毘縁花崗閃緑岩は,普通角閃石黒雲母花崗閃緑岩で構成され,北部で横田花崗岩体(黒雲母花崗岩)と,南部で竜駒花崗岩体(黒雲母花崗閃緑岩)と接する.野外調査によりこれらが同時期に活動したことが明らかとなった.阿毘縁岩体のRb–Sr全岩年代は60.5 ± 6.3 Ma(SrI = 0.7053)で横田岩体の既報年代(約59.6 Ma: SrI = 0.7048)と近似し,野外調査の結果と矛盾しない.一方,両SrI値は異なり,本地域では同位体組成の異なるマグマが隣接して存在したことが示唆される.阿毘縁岩体は火山弧型のマグネタイト系I-type花崗岩の特徴をもつ.主・微量成分は一般にハーカー図で分化トレンドを示すが,希土類元素パターンは大きく変化しない.この原因は分別鉱物が希土類元素濃度を変化させにくい組み合わせであったことと,マグマの分化度が小さかったことに由来する.