抄録
北上・阿武隈山地は,日本には数少ない古生代花崗岩類の産地であるとともに,日本列島のもっとも顕著な花崗岩形成時代の1つであった白亜紀火成活動の主要な舞台でもある.南部北上帯に属する阿武隈山地東縁には,後期石炭紀の割山花崗岩体と前期白亜紀の高瀬花崗岩体が共存して露出していることが分かった.両岩体は,全岩化学組成の特徴からいずれも典型的なアダカイトである.300 Ma頃の年代を示す花崗岩は,これまで日本列島からほとんど見つかっておらず,花崗岩形成の空白期間とされてきた.300 Ma頃のアダカイト質花崗岩が発見されたことから,これまでペルム紀(約280 Ma)とされてきた日本列島の後期古生代花崗岩の形成開始年代は,後期石炭紀の300 Maまで遡ることになる.またその花崗岩形成は,海嶺沈み込みあるいは若いプレートの沈み込みで始まった可能性が指摘できる.