地質学雑誌
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119 巻, Supplement 号
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日本地質学会第120年学術大会(2013年・仙台)
  • 菅原 大助, 箕浦 幸治
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S1-S17
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による津波で大きな被害を受けた仙台平野では,この25年間に,過去の津波の地質記録「津波堆積物」に基づいて古津波イベントの調査研究が進められ,特に西暦869年の貞観津波については海岸線から数kmに渡って浸水したことが明らかにされていた.しかし,2010年までの数百年間は津波で大きな影響を受けた歴史記録は知られておらず,数十年ごとに発生してきた宮城県沖地震への対策は行われていたものの,三陸沿岸のような津波常襲地域と比べると津波に備える意識は低かったと思われ,巨大津波を念頭に置いたハード・ソフトの防災・減災対策はほとんど進んでいなかった.
    本巡検では,東北沖津波により被害を受けた仙台平野沿岸部の状況と,この地域に見出されている古津波堆積物について紹介する.津波の威力,被害,侵食・堆積作用の痕跡,および被災地の復旧・復興状況を視察すると共に,地質記録から得られるハザード情報の意義と,その調査研究の方向性について議論する機会としたい.
  • 遅沢 壮一, 布原 啓史
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S18-S26
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    2008年6月14日に起こった岩手・宮城内陸地震では,地表にも本地震に関連すると考えられる地震断層が現れた.これら断層については数多くの調査報告がなされた.しかし,周辺地層の層序・構造の詳細や,それらほんでらと断層との関連についての詳細な報告は必ずしも多くない.一関市本寺の本見学コースでは,地表地震断層は地震後の改修により,現在ではその痕跡も見られないが,自然露頭を中心に,花崗岩と,カルデラ充填の陸成堆積物や海成層を区分したうえで,これらが断層関係にあることを観察する.露頭に見られるこれら断層のごく近傍に地表地震断層が生じたことを,地表地震断層の位置を解説したうえで,観察する.荒砥沢ダムでは,地表地震断層はカルデラ縁正断層そのものに生じているが,既に観察不能であるため見学しない.
  • 宮本 毅, 蟹澤 聰史, 石渡 明, 根本 潤
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S27-S46
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    仙台市街を構成する大地は,新第三紀中新世以降,たび重なる変動を経験しながら海と陸の時代を繰り返し,現在の姿となった.現在の仙台市街から最も近い火山は約20 km離れた奥羽山脈上にあるため,火山とは無縁の地と感じるかもしれないが,数多くの火山活動が発生し,大地の形成と変貌に一役買っていたと考えられる.本巡検は地学教育とアウトリーチ用の巡検として,一般の方々を対象とし,仙台の大地の成り立ちとそこに介在した火山活動について理解していただくことを目的とする.見学は,仙台市を流れる広瀬川の周辺地域に分布する後期中新世以降の地層について行う.その中でも,特に現在の仙台市を中心とした地域を襲った火山噴火による噴出物に焦点をあてる.仙台市街で観察される火山噴出物は,それぞれ噴火のタイプが異なることから,火山噴火現象の多様性についても同時に解説を行う.
  • 永広 昌之, 森清 寿郎
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S47-S67
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    南部北上帯は,先シルル紀基盤岩類およびシルル系から白亜系までの浅海成,一部陸成層がまとまって分布するわが国唯一の地域である.基盤岩類や中部古生界の岩相・層序は,西縁部,北縁部,中央部-東部においてそれぞれ異なっている.中生界は南三陸の歌津-志津川地域の海岸地域によく露出しており,また,歌津-志津川地域はわが国唯一の三畳紀・ジュラ紀魚竜化石産地を含んでいる.本巡検では,南部北上帯西縁部長坂地域の先シルル紀基盤岩類(母体(もたい)変成岩類,正法寺(しょうぼうじ)閃緑岩)と上部デボン~石炭系(鳶ヶ森(とびがもり)層,唐梅館(からうめだて)層,竹沢層)の岩相・層序,および南三陸歌津層・志津川地域に分布するペルム~ジュラ系(ペルム系末(すえ)の崎(さき)層・田の浦層,三畳系稲井(いない)層群,皿貝(さらがい)層群,ジュラ系細浦層)の,魚竜化石産出層準を含む,岩相・層序を見学する.あわせてペルム系に挟在する燐酸塩・炭酸塩岩の産状を観察する.
  • 竹谷 陽二郎, 遅沢 壮一
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S68-S81
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    福島県太平洋岸北部の相馬市から南相馬市にかけての丘陵地帯に,中部ジュラ系~最下部白亜系の相馬中村層群が分布する.本層群は南部北上帯に属し,浅海性堆積物と河川堆積物が交互に繰り返しており,環境変化が大きい沿岸相を示す堆積物である.本層群は,かねてよりジュラ紀の軟体動物や植物化石の産地として知られていたが,最近,栃窪層からソテツ類など,中ノ沢層からアンモナイト,穿孔性二枚貝,甲殻類など,小山田層からアンモナイトなど,新種の発見が相次いでおり,本邦におけるジュラ紀~白亜紀の重要な化石産地として再認識されている.本巡検では,本層群中,粟津層,中ノ沢層,富沢層および小山田層の代表的な岩相を示す露頭を観察し,特に海生動物化石の産出状態を見る.最後に南相馬市博物館を訪れ,展示されている本層群のタイプ標本を観察する.
  • 梅津 慶太, 平山 廉, 薗田 哲平, 高嶋 礼詩
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S82-S95
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    東北地方の太平洋沿岸には,続成作用の影響が少なく,保存状態のよい化石や堆積構造を観察できる非海成~浅海成の白亜系が点在している.下部白亜系の宮古層群は,浅海成の波浪堆積物が主体で海生動物化石を多産し,上部白亜系の久慈層群は琥珀やカキ類の密集層,および様々な脊椎動物化石を産出することで注目されている.この巡検では,宮古層群最下部の非海成層を形成する湾奧デルタの堆積物から宮古層群中部~上部の海生動物化石密集層や津波堆積物を含む浅海層の層序,さらに非海成~浅海成層からなる久慈層群の層序および堆積構造などを観察する.また,久慈層群玉川層の最上部から報告された恐竜などを含む陸生脊椎動物化石群の発掘現場や久慈琥珀博物館も訪問する.
  • 藤原 治, 鈴木 紀毅, 林 広樹, 入月 俊明
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S96-S119
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    本巡検では,東北日本の太平洋側新第三系の標準地域としての宮城県仙台市から名取市にかけて分布する新第三系を見学する.見学の要点は,シーケンス層序と奥羽山脈発達史などの研究成果を念頭においた観察にある.最下位の茂庭層では,同時期の地層では例の少ない岩礁性動物群化石を見る.時間が許せば,茂庭層-旗立層境界に見られる海緑石層を見学し,東北日本で同時期に海緑石層が形成されていた一端を紹介する.名取川下流の露頭が本巡検の主要な見学地で,これまでの巡検で詳細には紹介されたことがない,旗立層と綱木層の不整合と堆積サイクルを見学する.この見学地は,フィッション・トラック年代の測定用試料を採集した露頭でもあるため,旗立層・綱木層の見学地としては模式地に匹敵する重要地点である.青葉山丘陵の見学地点では,綱木層と梨野層の境界を見学する.梨野層は白沢カルデラの東縁を構成する地層とされるが,綱木層との層序関係については不整合か整合か決着していない.最後に,仙台層群を観察する.下位の名取層群とは対照的に水平層となっていることが分かるほか,竜の口層から向山層への層相変化を見ることができる.
  • 伴 雅雄
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S120-S133
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    蔵王山は,東北日本火山フロントに位置する成層火山である.本コースでは,テフラや火口近傍の噴出物を観察することにより,蔵王山の最新期の噴火履歴を理解する.また最新期中最大の約3万年前の噴火によってもたらされた火砕岩の様々な岩相も観察する.
  • 小澤 一仁, 前川 寛和, 石渡 明
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S134-S153
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    南部北上山地は,シルル紀の酸性火山岩類を含む地層が分布し,シルル紀前期の花崗岩も確認されており,大陸性の地殻がシルル紀-デボン紀に存在していたと考えられる古い地塊である.この地塊の北縁と西縁には,オルドビス紀の島弧オフィオライト(早池峰(はやちね)・宮守(みやもり)オフィオライト)とオルドビス紀~デボン紀の間に形成された高圧変成岩類(母体(もたい)変成岩類)が分布し,これらは,オルドビス紀以降のおよそ数千万年で成熟した島弧地殻へと進化していった沈み込み帯の発達過程を記録している.本見学旅行では,早池峰・宮守オフィオライトのマントルセクションとほぼ同時~1億年後の沈み込み帯である母体変成岩を対象として,これまでの地質学・岩石学・地球化学的研究に基づいてオルドビス紀の島弧を復元し,当時の島弧マントルの進化過程について議論したい.
  • 土谷 信高, 大友 幸子, 武田 朋代, 佐々木 惇, 阿部 真里恵
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S154-S167
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    北上・阿武隈山地は,日本には数少ない古生代花崗岩類の産地であるとともに,日本列島のもっとも顕著な花崗岩形成時代の1つであった白亜紀火成活動の主要な舞台でもある.南部北上帯に属する阿武隈山地東縁には,後期石炭紀の割山花崗岩体と前期白亜紀の高瀬花崗岩体が共存して露出していることが分かった.両岩体は,全岩化学組成の特徴からいずれも典型的なアダカイトである.300 Ma頃の年代を示す花崗岩は,これまで日本列島からほとんど見つかっておらず,花崗岩形成の空白期間とされてきた.300 Ma頃のアダカイト質花崗岩が発見されたことから,これまでペルム紀(約280 Ma)とされてきた日本列島の後期古生代花崗岩の形成開始年代は,後期石炭紀の300 Maまで遡ることになる.またその花崗岩形成は,海嶺沈み込みあるいは若いプレートの沈み込みで始まった可能性が指摘できる.
  • 山田 亮一, 吉田 武義
    2013 年 119 巻 Supplement 号 p. S168-S179
    発行日: 2013/08/15
    公開日: 2014/03/21
    ジャーナル フリー
    北鹿(ほくろく)地域は,本邦有数の大規模黒鉱鉱床が密集することで知られる.黒鉱鉱床は,金銀をはじめ多様な有価金属を含有し,その経済的価値も高いことから,これまで膨大な量の探鉱活動が行われた.その結果,黒鉱に関る地質・鉱床学的知見のみならず,それらと密接に関連する東北本州弧の島弧発達過程についても,時間分解能の高い詳細なデータが蓄積された.本巡検では,背弧拡大の直前に行われた陸弧安山岩の活動から,背弧海盆バイモーダル火山活動を経て島弧成立に至るまでの一連の火山活動の変遷を観察し,それらの必然的産物として形成された黒鉱鉱床について,現世海底熱水鉱床と対比しつつ,最近の知見を踏まえて新たな視点から紹介する.
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