地質学雑誌
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論説
日本における白亜紀最初期のベレムナイトとその古生物地理学的意義
佐野 晋一伊庭 靖弘伊左治 鎭司浅井 秀彦ジューバ オクサナS.
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2015 年 121 巻 2 号 p. 71-79

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抄録

日本の最下部白亜系産ベレムナイトを検討し,岐阜県荘川地域手取層群御手洗層からシリンドロチューティス科Cylindroteuthis aff. knoxvillensis Andersonの,そして宮城県気仙沼地域磯草層および福島県南相馬地域相馬中村層群小山田層からメソヒボリテス科Hibolithes spp.の産出を,それぞれ初めて確認することができた.ベレムナイト古生物地理において,シリンドロチューティス科はボレアル系,メソヒボリテス科はテチス系と考えられており,現在の緯度ではより北に位置する南部北上地域にテチス系動物群が,一方,手取地域にボレアル系動物群が存在することは,当時の古地理や海流系を復元する上で注目される.また,上記の3層から発見されるアンモノイドはテチス海地域から太平洋域に広く分布する属からなり,ボレアル系の要素は知られていないことから,当時の手取地域がテチス区とボレアル区の境界付近に位置していた可能性がある.

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© 2015 日本地質学会
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