地質学雑誌
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論説
九州西部の黒瀬川帯下部ジュラ系:
熊本県坂本地域の渋利帯から産した前期ジュラ紀放散虫化石の意義
石田 直人
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2015 年 121 巻 2 号 p. 45-58

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抄録

九州西部に位置する熊本県坂本地域において,黒瀬川帯の要素のひとつ,渋利帯の坂本層から前期ジュラ紀Pliensbachian期を示す放散虫化石を発見した.渋利帯の坂本層からは確実な年代指標が得られていなかったが,これにより下部ジュラ系を含むことが判明した.また,下位の上部三畳系松求麻層との間には時間間隙が存在し,両層の境界は不整合と考えられる.
この10年間に,九州西部の黒瀬川帯では4地域において下部ジュラ系が識別されている.今回発見された放散虫化石群集は,これら下部ジュラ系間の対比に重要な役割を果たす.例えば,渋利帯の坂本層は坂本帯の平沢津谷層と岩相・時代の両面から対比できる.さらには,九州西部で判明した時代関係から,黒瀬川帯下部ジュラ系の堆積と沈み込み帯での付加体成長は,ジュラ紀初頭には既に同時に進行していることが示唆される.

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© 2015 日本地質学会
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