地質学雑誌
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論説
ポロシリオフィオライト中に見出された左横ずれ剪断帯における変成作用とマイロナイト化
加藤 暁之金川 久一廣井 美邦
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2016 年 122 巻 9 号 p. 461-475

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抄録

日高変成帯と接合後衝上時に広域的に右横ずれ剪断変形を受けたとされているポロシリオフィオライト中に,NNW走向の小規模な左横ずれ剪断帯を見出した.ポロシリオフィオライト中の変はんれい岩は角閃岩化と同時に右横ずれ剪断変形を受けており,左横ずれ剪断帯では,その角閃岩が斜長石の動的再結晶とホルンブレンド+斜長石の細粒粒子集合体を生成する変成反応により,マイロナイト化している.面構造の方位変化や非対称微細構造などは,全て左横ずれの剪断センスを示す.ホルンブレンド-斜長石の地質温度計より,角閃岩とマイロナイトの変成温度はそれぞれ,約708±7°Cおよび678±6°Cと推定され,角閃岩の左横ずれ剪断変形とマイロナイト化は後退変成時に起こったと考えられる.先立つ右横ずれ剪断変形が衝上成分を持つのに対し,左横ずれ剪断変形は正断層成分を持っており,左横ずれ剪断帯は後退変成時の局所的な後退運動によって形成された可能性がある.

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© 2016 日本地質学会
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