地質学雑誌
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論説
紀伊半島中央部に分布する四万十帯白亜系麦谷層の地質と砕屑性ジルコンU-Pb年代
志村 侑亮常盤 哲也竹内 誠山本 鋼志
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2017 年 123 巻 11 号 p. 925-937

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抄録

紀伊半島中央部に分布する四万十帯白亜系の構造的最上位の地層である麦谷層について,岩相分布,地質構造,および砕屑性ジルコンU-Pb年代を明らかにした.本地域の麦谷層は,構造的上位から下位へ,泥岩,破断した砂岩泥岩互層,および混在岩を主とする伊豆尾ユニットと,泥岩を主とする狭戸ユニットに区分され,層理面は概ね西北西-東南東走向で,北に中角で傾斜する.麦谷層の3試料から得られた砕屑性ジルコンU-Pb年代によると,最も若いジルコン粒子年代もしくは最も若いクラスター年代は100~110Maを示し,後期白亜紀以降の年代を示すジルコンは1粒子も認められなかった.後期白亜紀に西南日本では活発な火成活動が生じていたことを考慮すると,麦谷層の堆積年代はアルビアン~セノマニアンであると推定される.麦谷層の最も若いジルコン粒子年代,最も若いクラスター年代,および年代構成は,アルビアン~セノマニアンに堆積した湯川層のジルコン年代の特徴とも一致する.

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© 2017 日本地質学会
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