地質学雑誌
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巡検案内書:第124年学術大会(2017・愛媛大会)
三波川帯トラバース:
最浅部変成岩から最深部超苦鉄質岩まで
青矢 睦月水上 知行遠藤 俊祐
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2017 年 123 巻 7 号 p. 491-514

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抄録

我々が直接には到達できない沈み込み帯深部の岩石を,何らかの地質学的過程の末に現在の地表に露出させているのが低温高圧型の三波川変成帯であり,三波川帯が擁する地下約15〜100kmの深さで形成した多様な岩石,しかも沈み込み境界の下盤側と上盤側,両者の岩石群をまとめて観察できるのが四国中央部の新居浜地域である.そういった岩石群が地下深部へもたらされ,その後地表に至るまでに行われたプレート間のせめぎ合いは,岩石が宿すに至った鉱物組成や変形構造,および岩石相互の露出位置関係という形で保存されている.本巡検では,造山運動や地殻-マントル相互作用に関する情報が数多く記録された新居浜地域三波川帯の地質を,おもに構造岩石学的な視点から概観する.地殻起源変成岩としては最浅部にあった中七番ユニットの砂質片岩や最深部にあった権現エクロジャイト等を,またマントルウェッジ起源の超苦鉄質岩類では最深部に達していた東赤石かんらん岩体を主な観察対象とする.白亜紀のユーラシア東縁沈み込み帯深部で起こっていた様々な地質現象,特に変形と化学反応に,短時間でなるべく濃密に触れることができるよう,本巡検を企画した.

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© 2017 日本地質学会
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