2018 年 124 巻 2 号 p. 95-109
島根半島の中新統,古浦層と成相寺層からは,それぞれ陸生・海生化石が産出する.しかし,成相寺層下部のみ,その産出は限られ,生層序学的年代と堆積環境が不明であった.この層準について,微化石による生層序学的分析を行ったところ,中上部の層準から微化石の産出を確認することができたが,下部は無化石であった.底生有孔虫群集は,古水深が漸深海帯の膠着質種で占有され,低酸素の堆積環境を示す石灰質種より構成されていた.底生有孔虫群集について,共通種が産出する日本海ODP Leg 127,Site 797の膠着質種と石灰質種の出現層準を参照すると,成相寺層下部の中上部と下部の境界に対比できることが明らかになった.また,古浦層から続いた漸深海帯に達する古水深の汽水的環境が海水の侵入によって置換され,外洋性の海洋環境へ変化した年代を17.75Ma頃とし,このとき以降に日本海への海流の流入が一般化したと考えた.