2018 年 124 巻 3 号 p. 153-169
筆者の研究を中心として,マントル岩由来の砕屑物(特に砕屑性クロムスピネル)の解析法およびその意義を総括した.マントル岩由来の砕屑物は機械的・化学的性質が特異であり,独特の意義を有する.クロムスピネルは岩石学的に重要ないくつかの元素を主要成分として含み,かんらん岩の成因を解釈する上で重要な鉱物である.その組成は,関与したマグマの組成の違いおよびサブソリダスでの冷却・変成により変化する.侵食・運搬・堆積・続成過程では化学組成の変化はなく,後背地の解析のよいツールとなる.砕屑性クロムスピネルはオマーン・オフィオライトマントル部のようなかんらん岩体の性質を概観するのに有効である.また,蛇紋岩メランジュのマトリックスのように強く破砕されたかんらん岩体の性質を理解するのに威力を発揮する.かんらん岩体を,相伴う砕屑性粒子と合わせて解析できればさらに有効である.環伊豆地塊蛇紋岩帯はよい適用例を示す.