地質学雑誌
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総説
島弧上部マントルの岩石学的性質:
何が固有か?
荒井 章司石丸 聡子
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2018 年 124 巻 8 号 p. 551-573

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抄録

本論文では島弧マグマ中および島弧に噴出した他のマグマ中の捕獲岩,さらに前弧域の海底に露出するかんらん岩を島弧リソスフェアマントルを代表するものとして,その岩石学的性質(モード組成, 鉱物化学組成, 平衡条件, 酸化還元状態)を総括した.特に火山前線~前弧域の枯渇したハルツバーガイトの存在は上部マントル・ウェッジを特徴づける.それらは高度部分溶融の融け残りである.また,それらの多くは交代作用(シリカの付加および加水作用)を被っている.トレモラ閃石の存在は,低温および/または枯渇した(Alに乏しい)化学組成を示唆し,特徴的である.特に太平洋西部の火山前線~前弧域のものは比較的高い酸素フガシティーを示し,島弧マントルを強く特徴づけている.ただし,いくつかの島弧かんらん岩は低い酸素フガシティーを示すことが注目される.特に,マントル・ウェッジ深部には強い還元的な流体が存在している。

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© 2018 日本地質学会
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