地質学雑誌
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124 巻, 8 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
125周年記念特集:日本の火成岩研究の進展と展望
前文・表紙説明
総説
  • 何が固有か?
    荒井 章司, 石丸 聡子
    2018 年124 巻8 号 p. 551-573
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

    本論文では島弧マグマ中および島弧に噴出した他のマグマ中の捕獲岩,さらに前弧域の海底に露出するかんらん岩を島弧リソスフェアマントルを代表するものとして,その岩石学的性質(モード組成, 鉱物化学組成, 平衡条件, 酸化還元状態)を総括した.特に火山前線~前弧域の枯渇したハルツバーガイトの存在は上部マントル・ウェッジを特徴づける.それらは高度部分溶融の融け残りである.また,それらの多くは交代作用(シリカの付加および加水作用)を被っている.トレモラ閃石の存在は,低温および/または枯渇した(Alに乏しい)化学組成を示唆し,特徴的である.特に太平洋西部の火山前線~前弧域のものは比較的高い酸素フガシティーを示し,島弧マントルを強く特徴づけている.ただし,いくつかの島弧かんらん岩は低い酸素フガシティーを示すことが注目される.特に,マントル・ウェッジ深部には強い還元的な流体が存在している。

  • リソスフェア-アセノスフェア境界域のダイナミクスの理解に向けて
    小澤 一仁, 佐藤 侑人, 成田 冴理
    2018 年124 巻8 号 p. 575-592
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

    アルカリ玄武含に普遍的に含まれるスピネルカンラン岩捕獲岩の圧力推定についてレビューを行い,それがどのような理由でいかに困難であるかを共通認識として持てるように,これまで提案されてきた圧力推定方法の問題点をそれぞれの方法について指摘した.さらに,それらの問題をどのようにして解決し,充分な精度を持ったスピネルカンラン岩相の圧力推定方法を確立できるのかについての指針を示した.さらに,その推定値を検証するための方法として,マントル物質がマグマに取り込まれてから急冷するまでの時間スケールと上昇速度を組み合わせた方法を提案し,マグマの上昇に関するこれまでの研究をレビューし,有望な反応過程について考察した.

  • 海野 進
    2018 年124 巻8 号 p. 593-601
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

    100周年以降の25年間は日本の地質学者が広く海外に活躍の場を拡げるとともに,新たな分析機器の導入や解析手法の開発により,オフィオライトを構成するマントルカンラン岩の精密な上昇プロセスやマントル中のマグマの移動・反応プロセス,マントルの流動・変形機構,マントル岩中の微小包有物の同定・分析などが勢力的に進められた.また,フィールド地質学の分野でも,詳細な地質調査に基づいて海洋地殻の形成プロセスや始生代の海洋地殻層序の復元などが行われた.本小論ではこれらの日本人によって行われた海外のオフィオライト研究のうち,世界で最も規模が大きく保存状態がよいとされるオマーン,島弧下マントルが露出するミルディータ,リサイクルしたスラブ由来の超高圧鉱物を含むルオブサ,世界で最も新しいチモールとタイタオ,世界最古の付加体からなるイスアとピルバラの各オフィオライトについて紹介した.

  • 2017年における総括
    中島 隆
    2018 年124 巻8 号 p. 603-625
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

    2017年時点での日本の花崗岩の総括を行った.日本列島の花崗岩類はすべて顕生代の造山運動で形成された島弧型花崗岩である.大部分が日本列島がまだアジア大陸の一部だった時代に大陸の成長最前線として形成された花崗岩類で,ほとんどがIタイプであり,Sタイプ花崗岩類は非常に少ない.起源物質はその大部分がマントル由来の玄武岩質下部地殻の部分溶融によると考えられ,古い大陸基盤の存在や関与は考えられない.その活動はきわめてエピソディックであり,地表露出面積では50-130Maの白亜紀~古第三紀の花崗岩類が全体の約8割を占め,後期中生代環太平洋花崗岩地帯の一部をなす.西南日本外帯には13-15Maと極めて限られた期間に活動した花崗岩類が広範囲に露出しており,背弧海盆の拡大に関連した特異なテクトニクスでの活動と考えられている.ジュラ紀と三畳紀の花崗岩類は飛騨帯に見られる.古生代の花崗岩類はきわめて少ない.

巡検案内書:第125年学術大会(2018・札幌大会)
  • 加瀬 善洋, 川上 源太郎, 高野 修
    2018 年124 巻8 号 p. 627-642
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

    前期中新世末期~中期中新世の北海道中央部では,島弧–島弧衝突により南北約400km,幅数10kmにわたる地域に狭長な前縁盆地群(foreland basins)が形成された.これら前縁盆地群の埋積層に対しては,これまでに多くの堆積学的な研究が行われてきた.このうち前縁盆地群南部を構成する日高堆積盆の埋積層は,陸上分布(日高海岸地域)および沖合延長部(日高沖)ともに石油胚胎の期待が高まっている.

    本巡検では,日高海岸地域に分布する中部~上部中新統を対象に,日高堆積盆の埋積に伴う堆積システムの変化(トラフ充填型タービダイト→プロファンデルタ堆積物→ファンデルタスロープ堆積物)を観察し,従来の研究で解釈された堆積学的枠組みの特徴について議論する.また層序や地質構造と油徴との関係や泥火山の分布について,石油地質学的な観点から新たに議論する場としたい.

  • 渡邊 達也, 山崎 新太郎, 亀田 純
    2018 年124 巻8 号 p. 643-649
    発行日: 2018/08/15
    公開日: 2018/10/10
    ジャーナル フリー

    近年,小型無人航空機の安全性の向上,低価格化により,空中写真撮影が手軽に行えるようになってきた.また,高精度の衛星測位システムの低価格化や,複数枚の写真から容易に三次元モデルを作る写真処理技術も進展した.そして,これらを組み合わせることで高精度の地形モデルの作成が容易となり,現在では多くの研究者,技術者によって地形・地質の調査・研究に応用されている.

    本コースでは,小型無人航空機による空撮,高精度衛星測位技術を用いた測量,取得した画像および測量成果を用いた数値地表モデルの作成法について紹介する.

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