2019 年 125 巻 3 号 p. 203-218
十勝岳火山噴出物の変質火山灰粒子について岩石学的観察を行った.4.7ka噴火,3.3ka噴火,1926年噴火噴出物を対象とした.これらの火山灰粒子は様々な程度に変質し,鉱物組み合わせからシリカタイプ(シリカ鉱物のみ),ミョウバン石タイプ(シリカ鉱物+ミョウバン石±カオリン鉱物),カオリンタイプ(シリカ鉱物+カオリン鉱物)に分類される.いずれの鉱物組み合わせも酸性熱水変質を示している.全試料において,酸性変質部と未変質部からなる弱変質した火山灰粒子が卓越する.このような岩石組織は,熱水流通系における酸性熱水-岩石反応により形成したものである.これには多量の熱水が岩石と反応しながら排出されるような反応過程が考えられ,反応時間はごく短期間であった.これらの特徴は,マグマ貫入時に一時的に形成した高温酸性熱水系による非定常プロセスに由来している.以上の点はマグマ貫入頻度が高い十勝岳の火山熱水系の特徴であると考えられる.