地質学雑誌
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125 巻, 3 号
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論説
  • :十勝岳火山噴出物の例
    井村 匠, 大場 司, 中川 光弘
    2019 年 125 巻 3 号 p. 203-218
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/06/07
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    十勝岳火山噴出物の変質火山灰粒子について岩石学的観察を行った.4.7ka噴火,3.3ka噴火,1926年噴火噴出物を対象とした.これらの火山灰粒子は様々な程度に変質し,鉱物組み合わせからシリカタイプ(シリカ鉱物のみ),ミョウバン石タイプ(シリカ鉱物+ミョウバン石±カオリン鉱物),カオリンタイプ(シリカ鉱物+カオリン鉱物)に分類される.いずれの鉱物組み合わせも酸性熱水変質を示している.全試料において,酸性変質部と未変質部からなる弱変質した火山灰粒子が卓越する.このような岩石組織は,熱水流通系における酸性熱水-岩石反応により形成したものである.これには多量の熱水が岩石と反応しながら排出されるような反応過程が考えられ,反応時間はごく短期間であった.これらの特徴は,マグマ貫入時に一時的に形成した高温酸性熱水系による非定常プロセスに由来している.以上の点はマグマ貫入頻度が高い十勝岳の火山熱水系の特徴であると考えられる.

  • Jun-ichi Tazawa, Hiroshi Kurita
    2019 年 125 巻 3 号 p. 219-225
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー

    本論文で,南部北上帯奥火の土地域の尻高沢層上部から採集された3属4種からなる前期石炭紀腕足類フォーナ(奥火の土フォーナ)を記載する.このフォーナは以下の種からなる:Rhipidomella kusbassica Besnossova, Schizophoria pinguis Demanet, S. mayesensis Carter, Unispirifer kozuboensis (Minato).奥火の土フォーナはトルネー期後期(late Tournaisian)を示すので,尻高沢層上部は上部トルネー階(upper Tournaisian)に対比される.

  • 植木 忠正, 丹羽 正和, 岩野 英樹, 檀原 徹, 平田 岳史
    2019 年 125 巻 3 号 p. 227-236
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー

    大田テフラは中部日本の代表的な鮮新世広域テフラである.本研究では,これに対比される岐阜県東濃地域の中津川Ⅰ&Ⅱ火山灰層から採取した2試料を用いて,同一ジルコン粒子に対するU-Pb年代とフィッション・トラック(FT)年代のダブル年代測定を行った.その結果,2試料の加重平均値として,U-Pb年代は3.94±0.07Ma,FT年代は3.97±0.39 Maの年代が得られた.閉鎖温度の高いU-Pb年代と閉鎖温度の低いFT年代が誤差の範囲で一致することから,これらの年代は高温から急速に冷却されたテフラの噴出年代を示すと考えられる.本研究の年代測定結果は既存研究のFT年代や古地磁気層序とも整合的であり,中部日本をはじめとする地域の下部鮮新統の広域層序と対比において重要な年代指標となると考えられる.

  • 江島 圭祐, 大和田 正明, 今岡 照喜, 亀井 淳志
    2019 年 125 巻 3 号 p. 237-253
    発行日: 2019/03/15
    公開日: 2019/06/07
    ジャーナル フリー

    香春花崗閃緑岩牛斬山岩体(牛斬山花崗閃緑岩)は福岡県田川市に分布し,北部九州バソリスの一部を形成する.牛斬山花崗閃緑岩は岩体中央部の細粒相を境に南部・北部岩体に区分され,岩体内には斑状細粒花崗岩,斑状細粒トーナル岩および斑状細粒閃緑岩が小規模岩脈として貫入する.本研究では,牛斬山花崗閃緑岩と小規模岩脈類の成因関係を検討した.斑状細粒花崗岩は南部岩体の斜長石・角閃石および黒雲母が取り去られる分別結晶作用により形成可能である.一方,斑状細粒トーナル岩は南部岩体と斑状細粒閃緑岩の混合・または斑状細粒閃緑岩が同化作用を受けることにより形成したと推察される.斑状細粒閃緑岩はSanukitic HMA組成に類似した組成であり,北部九州に点在する高Mg安山岩組成の岩石と類似した組成を示す.よって,牛斬山花崗閃緑岩と岩脈類は混合,分化および同化作用の様々なマグマ過程へて形成したと推察される.

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