2020 年 126 巻 10 号 p. 575-587
東京都区部の地下には東京層と呼ばれる更新統が分布し,模式地(渋谷区代々木公園)の東京層の形成年代はMIS 5eとされている.武蔵野台地東部に位置する北区中央公園で掘削されたボーリングコアの堆積相と珪藻化石群集を検討した結果,コアの深度33m以浅には礫層を基底としその上位に浅海成の泥層と砂層が累重する2つの堆積サイクルが認められた.テフラ層の対比によって,上部の堆積サイクルはMIS 7eに,下部の堆積サイクルはMIS 9かそれよりも古い時代に堆積したことが示された.少なくとも上部の堆積サイクルは従来から東京層として扱われていることから,これまで東京層とされていた地層にはMIS 5eだけでなく,より古い時期に形成された堆積物も混在することが示唆される.今後は東京層の分布形態を層序学的観点から全面的に見直す必要がある.