地質学雑誌
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巡検案内書
山口県北西部における地すべりの地質と防災対策
河内 義文 久永 喜代志金折 裕司森山 亮一
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2020 年 126 巻 2 号 p. 95-110

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抄録

山口県北西部の日本海に沿って,東西に油谷半島の付け根付近から半島先端を経て角島に至るまで,古第三紀後期漸新世から新第三紀中期中新世の堆積岩が分布している.この基盤岩は後期中新世に噴出した玄武岩の溶岩流によって被覆されている.この溶岩流によって形成された溶岩台地は,その後の地すべりや海水面の作用で侵食や運搬を受け,半島の尾根部にキャップロックとして残されている.この漸新-中新統堆積岩類は,十分固結していない段階から,玄武岩の荷重と地下水の供給を受け,堆積岩内あるいは境界付近をすべり面とする大規模地すべりが発生した.この大規模地すべり域では初生的な地すべりの後に少なくとも2回の地すべりの痕跡が残れている.本案内書では初生的な地すべりを1次地すべり,1次地すべりにより形成された地すべり土塊が,再度すべったものを2次地すべり,さらに表層部のみがすべったものを3次地すべりとする.本地域は,2次,3次地すべりを対象として「地すべり防止区域」に指定され,地すべり工事が実施されてきた.今回の巡検では代表的な地すべり地を巡り,山口県北西部日本海岸の地質との関連を紹介するだけでなく,最近の研究成果による詳細な地すべり滑動のメカニズム,解析手法,対策工事についても議論する.

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© 2020 日本地質学会
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