2020 年 126 巻 3 号 p. 137-148
中央構造線の北側に沿って小規模に分布する泉南流紋岩類は,西南日本内帯における後期白亜紀火山岩類分布域の南端にあたり,後期白亜紀花崗岩類に貫入され,和泉層群に不整合に覆われる.今回,淡路島に分布する泉南流紋岩類中の流紋岩溶結凝灰岩1試料を対象に,同一ジルコン結晶を用いたLA-ICP-MSによるU-Pb及びフィッション・トラック(FT)年代測定を行った.その結果,238U-206Pb年代の加重平均として94.0±1.1Ma(2σ)が,FT年代として72.3±2.6Ma(1σ)がそれぞれ得られた.U-Pb年代は,泉南流紋岩類を貫く花崗岩類の放射年代値とも調和的で,泉南流紋岩類の噴出年代に制約を与える.FT年代は,U-Pb年代より有意に若く,これは花崗岩類の熱的影響による若返り年代の可能性がある.