2021 年 127 巻 1 号 p. 41-50
山口県北西部に分布する後期白亜紀阿武層群の長門層原岡山安山岩部層と白滝山層天井ヶ岳安山岩部層について,野外調査,岩石記載,全岩化学分析,および斜長石K-Ar年代測定を行い,その層序学的位置について再検討した.その結果,両安山岩部層は,①阿武層群の火山性ベーズン内だけでなく外側の関門層群も不整合に覆うこと,②阿武層群(約90-80 Ma)よりも有意に若いこと(73-70 Ma),③阿武層群中に挟在する安山岩と地球化学的特徴がわずかながら異なることが分かった.したがって,両安山岩を阿武層群から切り離し,「原岡山安山岩」と改称し,山口県長門市-下関市豊北町に分布し,関門層群や阿武層群を不整合に覆う白亜紀最末期の安山岩として再定義した.原岡山安山岩の存在は,カルデラ形成を伴うイグニンブライト・フレアアップ(阿武層群)から定常的な火山活動への移行が,少なくとも約70 Maまで遡ることを示唆する.