2021 年 127 巻 1 号 p. 25-39
南九州せん断帯に分布する破砕帯の活動時期の制約のため,紫尾山花崗閃緑岩体から再加熱を被っていない試料2点と破砕帯に切られたアプライト脈沿いの試料1点に,フィッション・トラック(FT)およびU-Pb解析を適用した.ジルコンU-Pb年代は14.0~13.5 Ma,ジルコンFT年代は14.7~13.7 Ma,アパタイトFT年代は12.6~10.0 Maを示した.本岩体は14.0~13.5 Maに浅所に貫入し,60~130℃以下まで急冷したと推定された.平八重型と楠八重型の岩型で,貫入時期と冷却史に違いは見られなかった.せん断センスの観察によれば,破砕帯は約200℃以上でアプライト脈を複数回変位させている.破砕帯の活動時期は,アプライト脈の貫入時期(10.0±0.8 Ma)頃で,岩体の貫入・初期冷却に伴う膨張・収縮による破砕ではなく,岩体冷却後のテクトニックな作用に起因する可能性が高い.