2021 年 127 巻 4 号 p. 199-214
過去約25年で津波堆積物の研究は大きく進展し,日本各地の沿岸部の古津波履歴や規模の解明が進められてきた.一方で,2004年インド洋大津波や2011年東北地方太平洋沖地震津波等の最近の津波イベントにより形成された堆積物の調査研究も活発に行われ,堆積学的特徴や堆積過程等が検討されてきた.津波防災計画の立案にも堆積学的研究が活用されるようになった現在では,学術的研究の推進のみならず,いかに迅速に成果を社会に還元するかも重要になっている.次の25年間に我が国のいずれかの地域で巨大津波が発生する可能性は十分に考えられ,地質学的研究成果を踏まえた適切な減災対策が講じられることが望まれる.