2022 年 128 巻 1 号 p. 199-214
秋田県湯沢市蓮台寺の採石場に露出する厚さ10 mを超える帰属不明の礫層(蓮台寺礫層)についてその産状を記載し,起源について議論した.この礫層は,構成粒子の大きさや種類(色調)などの違いによって,15枚を超える多数の,層状に重なる礫質堆積物からなる.いずれも,カオリン鉱物に富む礫を主体とし,ラハール堆積物の特徴を示す.湯沢地域に分布するほかの地質単元との層位関係は,この礫層が2 Ma以降に堆積したことを示唆する.また,古流向はこれが南東から来たことを示唆し,礫を構成する鉱物が熱水変質起源であることから,その給源は,湯沢市街地南東の三途川カルデラ内にあって熱水変質起源のカオリン鉱物が記載されている地域に求めることができる.蓮台寺礫層を構成する多数のカオリン鉱物に富む礫質堆積物は,その給源において斜面崩壊もしくは水蒸気噴火で変質岩の岩屑が繰り返し生じて流出する時期があったことを示唆する.