群馬県南西部の下仁田町は中心市街地が山々に囲まれた小盆地にあり,信州の山間地と関東平野の境界に位置する自然豊かな町で,下仁田ジオパークはこの下仁田町内全域がエリアにふくまれる.地質学的には,中央構造線や国内で最も典型的なクリッペやフェンスターなどを含めたナップ構造とその内部の褶曲構造などにより地殻の変動を感じられる.また,地形的にも古い火山の侵食地形やクリッペをなす山々が独特の景観をなしている.特産物には,下仁田ねぎとこんにゃくがあり,日本三大奇勝「妙義山」をはじめとした豊富な自然,世界文化遺産「荒船風穴」などの地形を利用した産業遺産などがエリア内に点在している.
本巡検では,下仁田ジオパークのみどころにもなっている内帯,外帯,および跡倉クリッペの地質露頭および歴史文化遺産の見学を通じ,多様な地形地質条件の中で歴史を重ねてきた人々の文化について紹介する.また,これら,「自然」「歴史」「文化」などの地域資源をまるごと活かし,地域住民とともに行っている街づくりの実践も紹介する.
稲越断層は岐阜県北部に分布する活断層の一つである.著者らは稲越断層の活動性評価に資するべく,断層西部に露出する未報告の断層露頭を記載した.本断層露頭は地形的に検出された断層トレース上に位置し,幅約5 mの断層ガウジ・断層角礫帯を有する.複合面構造は右横ずれを示し,地形解釈に基づく運動方向と調和的である.断層を覆う砂礫層は局所的に断層帯内部に挟み込まれており,砂礫層に含まれる腐植土の放射性炭素年代はAD 1521-1658であった.これらのことは,本断層露頭が稲越断層の本体であること,稲越断層は約500-350年前以降に岐阜県北部で発生した4つの歴史地震のいずれかに伴い活動した可能性があることを示す.
相馬中村層群中ノ沢層(上部ジュラ系)の館ノ沢砂岩部層は,砂質河川成の栃窪層に波浪ラビンメント面を介して重なる海進残留相から始まり,外洋浅海から内湾-ラグーンに至る上方浅海化を示す,海退性の砂質堆積物であり,数回の小規模な振動を伴う相対海水準の緩やかな上昇期に,珪質砕屑性堆積システムが前進することによってできた.小池石灰岩部層は,珪質砕屑物供給が停止することで成立した炭酸塩バリア-ラグーンシステムとして,東西数 km南北10 km超の炭酸塩プラットフォームを構成していた.分布全域に追跡される5層の上方細粒化堆積相累重(層厚数-10数m)は,バリア浅瀬→浅瀬後背→ラグーンへの変化をもたらした,5回の小規模な相対海水準変動による海退-海進の繰り返しで形成された.中ノ沢層はキンメリッジアンからチトニアン前期の第2オーダー高海水準期に,第3オーダー海水準変動周期に対応して形成された可能性が指摘される.
地球温暖化が危惧される現在,将来の気候変動に対する南極氷床の振る舞いを理解することは学術的にも社会的にも喫緊の課題である.南極氷床は多様な時間スケールで変動するため,人工衛星や現地測地観測など比較的短期の変動を捉える観測手法に加え,地質記録やモデルシミュレーションを用いた数十年から数十万の長期的な時間スケールの南極氷床変動の復元が重要である.海水準記録は地質記録とglacial isostatic adjustment(GIA)モデルから復元が可能であり,全球的な氷床量すなわち海水量を反映する.そのため,長期的な時間スケールの南極氷床変動の復元において重要な指標である.本論文では,東南極における海水準変動の先行研究とGIAモデルの現状をまとめ,東南極海水準変動復元の研究における今後の展望を述べる.
コンクリーションは,地球のみならず火星の複数の地点で確認されている鉄コンクリーション(例:ブルーベリー)を含め,地層の続成過程を理解する上で重要な対象である.これまでの研究により,コンクリーションは様々なサイズを持ち,多くが球形の拡散過程による最小自由エネルギー形状を示すこと,多様な色パターンや鉱物組成から様々な流体が関与して形成されたことが示されている.また地層の堆積構造,粒径,空隙/間隙率,岩脈/断層とも関係しており,過去の鉄サイクルや水(地下水)との反応を示す重要な指標であることが分かってきた.一方で,その初生的形成や続成過程の全体像を解き明かすには,微生物活動の理解など未だ様々な課題が残っており,U-Th/Heによる年代測定などの新たなアプローチが必須である.今後も,地球と火星の両方において,形成プロセスの理解に向けたフィールド調査,モデル検証,新たな分析手法などの持続的な探査が必要である.
下川オフィオライトの玄武岩類は全般的に発泡度が低いが,一部の比較的厚いドレライト岩床が異常に高い発泡度を示す.本岩体はN-MORBで,大半が無発泡であることから起源マグマは揮発性成分に枯渇していた.高発泡ドレライト岩床の接触急冷縁が無発泡で内部が気泡に富むことから,貫入後に揮発性成分が飽和した.岩床から見つかった曹長石-カリ長石脈は,厚さが太く,不規則な境界をなし,他の脈に切られており,比較的大きな丸みのある気泡を含む.脈はまだ完全に固結していないドレライト中で形成された.脈は粗面岩質の組成を示しMORBの残液ではない.脈の鉱物化学組成は低温のソルバス以下の晶出を示す.気泡に富むドレライトの全岩化学組成はK2OとRbが高い.以上のことから脈は熱水流体の痕跡である.つまり岩床の高発泡の要因は,周囲の堆積物からマグマに熱水流体としてもたらされた揮発性成分であると考えられる.
四国北西部に分布するひわだ峠層は,三波川変成岩類上に載る最古の地層として知られ,しばしば三波川変成岩類の地表への露出年代を制約するために使われる.しかしながら,同層に関する先行研究は少なく,同層と三波川変成岩類との関係すらも明確には記載されてこなかった.そこで本研究では,同層の全貌を明らかにすることを目的とし,地質調査と砕屑性ジルコンのU-Pb年代測定をおこなった.ひわだ峠層は,層厚100 m以上の浅海成層で,石灰質および非石灰質な礫岩・砂岩により構成される.産出する海棲生物化石と砕屑性ジルコンのU-Pb年代から,その堆積年代は中期始新世のLutetian期前期であると推定される.また,同層は基盤の三波川変成岩類を無整合に覆い,また上位の久万層群によって傾斜不整合で覆われている.したがって,少なくとも四国地方の三波川変成岩類は,中期始新世初めまでには地表に露出していたと考えて良い.
玄能石はイカアイトの方解石仮晶で,世界各地の堆積岩から産出する.玄能石コンクリーションは玄能石を中心に含む球~長球状の炭酸塩コンクリーションである.玄能石の先駆物となるイカアイト結晶は低温環境下でのみ形成することから,玄能石および玄能石コンクリーションは低温環境を示す指標として,古環境研究の分野で広く用いられている.また,近年,玄能石コンクリーションの成因が詳しく明らかにされたことから,玄能石および玄能石コンクリーションの産状が,堆積物中における化学的環境の指標になる可能性も示されている.一方で,堆積物中でイカアイト結晶が形成する物理化学的な条件については,まだ検討の余地が残されている.今後,現世堆積物中のイカアイトと地質時代の玄能石の両面から,それらの形成条件が明確にされることで,玄能石および玄能石コンクリーションが環境指標として果たす役割は増していくだろう.
西南日本,島根県隠岐島後には中新統が広く分布しており,その中でも久見層は日本海拡大最初期の環境変遷を記録している可能性があることから重要である.本研究では久見層模式地に露出する久見層の放散虫化石分析を行った.その結果,久見層上部からはEucyrtidium inflatum帯a亜帯~Lychnocanoma magnacornuta帯下部が認められ,久見層下部からはMelittosphaera magnaporulosa帯が認められた.さらに,久見層最下部から下部にかけてPentactinosphaera hokurikuensisとCyrtocapsella tetraperaの2種によって構成されるP-C群集が産出した.この群集は非海水成層の直上でのみ確認されることから,日本海拡大最初期の特異的な海洋環境を指標する群集である可能性を指摘した.また,珪藻化石および放散虫化石に基づいて日本海側の中新統と対比を行った結果,久見層下部の群集は奥尻島の釣懸層と最も類似していると考えられる.
We investigated the hydraulic and mechanical properties of spherical calcium carbonate concretions and their surrounding matrices in a Neogene accretionary deposit in the Hayama Group (Kanagawa prefecture) and a brackish to marine formation in the Mizunami Group. The concretions in both formations have lower permeabilities and porosities and greater hardness than the surrounding host rocks. Although the concretions in both formations were formed in different depositional environments, they hardened a short time after the death of a living organism. This means that they can be considered stable over long periods and would not be significantly affected by subsequent deformation and tectonic events. This property is useful for engineering applications, as it would yield a long-lasting seal.
関東平野東端,千葉県銚子周辺地域の台地の基部には,鮮新-中部更新統の犬吠層群が露出する.犬吠層群は海成の泥岩を主体とし,多数のテフラを挟む.近年,犬吠層群中のテフラの広域対比や年代の高精度化が進み,関東平野周辺における鮮新世以降の古地理やテクトニクスが議論できるようになってきた.銚子ジオパークは,犬吠層群が約10 kmに渡って海沿いに露出する崖をジオサイトの目玉として,2012年に認定された.本巡検では,犬吠層群中の代表的な広域テフラを観察するとともに,犬吠層群のジオサイトとしての活用を紹介する.
玄武岩質マグマに由来する伊豆大島火山は,伊豆諸島最北部に位置する火山島であり,伊豆諸島の活火山として最も活動度の高いものの一つである.本火山は約1,700年前に形成されたカルデラに特徴づけられ,カルデラ形成以降の噴火史が詳細に明らかにされている.それによればおおよそ100-150年間隔で12回の大規模噴火が,30-40年間隔で12回の中規模噴火が発生している.一方でカルデラ形成以前の噴火史については未解明な部分も多い.噴火履歴からみて現在,次の大規模噴火や中規模噴火がいつ発生しても不思議ではない.このように活火山としての活動性を印象づけ,地球の動的活動を学ぶ場を提供していることなどから伊豆大島はジオパークに認定されている.本巡検では,カルデラ形成以降・以前の噴出物をはじめ,他の火山由来の流紋岩質テフラを観察し,伊豆大島火山噴火史研究の現状とジオパークの活動を紹介する.
房総半島,三浦半島,多摩丘陵などに露出する後期鮮新世-中期更新世の前弧海盆堆積物である上総層群は,鮮新世以降における南関東の地質や地形の発達過程を理解する上で重要な地層である.なかでも三浦半島北部の上総層群下部-中部では近年,岩相層序学的研究および,広域凝灰岩層,石灰質ナノ化石,古地磁気,有孔虫化石の酸素安定同位体比などを用いた年代層序学的研究が盛んに行われている.その成果により,本地域の上総層群では,本邦でも有数の極めて詳細な上部鮮新統-下部更新統の層序が確立しつつあり,それによって房総半島において,いわゆる黒滝不整合により欠落している層準のほぼ連続的な地質記録が残されていることが明らかにされている.さらに本地域の上総層群から数多く産出する,主に二枚貝化石からなるメタン冷湧水性化学合成化石群集についても詳細な記載が行われてきており,プレート境界周辺の海洋底からのメタン湧出が,地質時代における地球環境に与えた影響を評価するうえで重要である.本コースでは,三浦半島北部の上総層群中部-下部を観察し,層序学的研究および,産出する化学合成化石群集についての研究成果について紹介する.
We present a diatom assemblage from two carbonate concretions hosting ammonite specimens from the Saku Formation (upper Turonian, lower Upper Cretaceous) in the Teshio-Nakagawa area, Hokkaido, northern Japan. Hemiaulus, Triceratium, and Costopyxis are the major taxa in the assemblage, and they are typical of upper Upper Cretaceous (Campanian-Maastrichtian) deposits. In contrast, the primitive cylindrical diatoms that are found mainly in Albian and Cenomanian deposits are largely absent, except for Gladius sp.
Previous records of mid-Cretaceous diatoms are rare, and our study documents the first well-preserved specimens from late Turonian deposits that have been reliably dated by refined molluscan biostratigraphy. We confirm that mid-Cretaceous diatoms overturned dramatically during the Cenomanian-to-Turonian interval, at the onset of the extreme paleoceanographic crisis known as the Ocean Anoxic Event 2.
鳥取市国府町宮下に露出する中新統鳥取層群岩美層の泥岩は,保存の良い浅海性の魚類化石を多産する.この泥岩は鳥取~北但地域の前期中新世末期の海進の最初期の地層であり,その堆積年代は山陰東部の海進史を検討する上で重要である.従来は泥岩中に挟まる凝灰岩から得られた16.8±0.8 Ma(1σ)のジルコンのフィッション・トラック年代が堆積年代として参照されていたものの,その年代値は不確かさが大きかった.そこで本研究では,先行研究と同一のマウント上のジルコンの年代をU-Pb法で再検討した.その結果,中新世の年代を示すコンコーダントな27粒子から17.4±0.2 Ma(2σ)の加重平均238U-206Pb年代を得た.この年代値は,従来の山陰東部の中新統の海成層の証拠よりも40万年ほど古い.中新統の岩相や古流向から古地理を推定すると,宮下地域は鳥取~北但地域の一連の堆積盆地内の低地に位置していたと考えられ,より早期に海水の影響を被る環境に変化したのだろう.
A new specimen of a fossil tooth of the Suidae (Mammalia, Artiodactyla) discovered in the upper Miocene Oiso Formation (ca. 8.29-5.57 Ma) of the Miura Group, Kanagawa Prefecture, Japan, is described. The tooth is left m3, and its hypoconulid has broken away. It is bunodont, low-crowned, and moderately to heavily worn. The m3 has the typical lower molar morphology of a medium-sized suid, with some furrows on the cusps. The part of the tooth containing the first two lobes is relatively elongated, similar to that of m3 of the Suinae. It is more elongated than that of m3 of the Asian Tetraconodontinae. Based on its size and observable morphology, this m3 is most comparable to that of Propotamochoerus hyotherioides (Suinae). This discovery reinforces the hypothesis that the Oiso Formation was deposited in the Honshu Arc, rather than the Paleo-Izu Arc. Only seven (five Miocene and two Pliocene) suid specimens have been reported from the Neogene of Japan to date.
This paper introduces two early-stage engineering applications inspired by concretion formation, a naturally occurring elemental and molecular concentration process. First, the precipitation of iron oxide from highly acidic wastewater using cement clinker and its applications to channel control were investigated. Blocking of channels by iron oxide precipitating around the clinker was confirmed using a column test. Second, the production of “Calcium carbonate concrete” using concrete waste and CO2 in the air was investigated, based on the fact that calcium carbonate is the binding material in calcium carbonate concretions. Understanding the natural mechanism of concretion formation is not only a fascinating topic from a scientific perspective, it also has potential engineering applications.
房総半島には下部~中部更新統の前弧海盆堆積物である上総層群が広く露出する.房総半島の上総層群では,前弧テクトニクスの連続的な記録媒体である前弧海盆の地質断面を陸上で直接観察でき,同時間面であるテフラ鍵層や微化石などの第四紀の高精度な層序学的手法を適用できる世界的にも珍しい条件が揃っている.最近,房総半島東部の5万分の1地質図幅の刊行をはじめ,上総層群の断層や大規模な海底地すべり堆積物の分布およびそれらの発達過程に関する研究の進展があり,上総層群の発達史を時系列で復元する条件が整いつつある.本巡検では房総半島東部に露出する上総層群下部に発達する露頭規模で観察が可能な断層と海底地すべり堆積物の主要な露頭を見学しながら前弧テクトニクスと堆積作用に関する研究の現状を紹介する.
下北ジオパークの主要なジオサイトである仏ヶ浦の凝灰岩2試料から抽出したジルコンのU-Pb年代を測定したところ,4.1および4.2 Maの値が得られた.これにより,従来中新世のグリーンタフとされてきた仏ヶ浦の凝灰岩は鮮新統であることが示された.当地域では岩相の類似から中新統と鮮新統が識別されず一括されてきた可能性が高く,広域的に層序を再検討する必要性が指摘される.
A fossil specimen of Anthracokeryx naduongensis (Mammalia, Artiodactyla, Anthracotheriidae, Microbunodontinae) discovered in the middle/upper Eocene Na Duong Formation at Na Duong Coal Mine in northeastern Vietnam is described. The specimen is a left mandibular fragment preserving p3-m3. It is characterized by an association of features that is observed in A. naduongensis, including a small size relative to most of other anthracotheriids, bunodont to bunoselenodont dentition, weak cingula, and a hypolophid on the lower molars. This specimen illustrates the precise morphology of m2-m3 of A. naduongensis from the type locality.
Numerous carbonate concretion samples were collected during dredging around Nagoya Port in the 1960s. Most of the samples contained biological remains, including crabs, sea urchins, and bivalves, which formed their nuclei. In this study, the radiocarbon (14C) ages of the shells of the biological remains inside the concretions, as well as of the concretions themselves, were determined. Based on the metabolic carbon ratios of the bivalvia and sea urchin shells, which were calculated using δ13C values, the 14C ages of the shells and those of the metabolic carbon were estimated to be 7,350-7,050 cal BP and 9,680-9,430 cal BP, respectively. The 14C ages of the carbonate concretions were older than those of the shells due to the addition of metabolic carbon with older ages to the carbon of the concretion. The corrected age after removal of the old carbon was estimated to be 7,530-7,270 cal BP. The near-identical corrected ages of the shells and concretions indicate that the carbonate concretions in the Nagoya Port area formed rapidly after the death of the organisms, which is consistent with morphological evidence of rapid concretion formation in the sediment.
紀伊半島の四万十付加体竜神コンプレックスの堆積年代はこれまで主に半島西部及び中央部で調査され,半島東部からは年代データの報告がなかった.筆者らは半島東部の竜神コンプレックス寒川ユニットに挟在する珪長質細粒凝灰岩からジルコンを分離し,68.1±0.4(2σ)MaのU-Pb年代と13.3±1.6(2σ)MaのFT年代を決定した.U-Pb年代はマーストリヒチアン期後期の堆積を示唆し,これは半島西部及び中央部で放射年代と放散虫化石から推定されている堆積年代と類似する.一方,FT年代は試料採取地周辺に分布する熊野酸性岩類や大峯酸性岩類などの中期中新世火成岩類の放射年代と類似するため,中期中新世火成岩類の熱影響によってリセットされた年代と考えられる.
The Nedamo Belt in the Kitakami Massif, NE Japan, contains early Carboniferous and Early Triassic accretionary complexes. Tectonic blocks containing plutonic rocks, ultramafic rocks and high-P/T schists occur in these complexes and characterize the Nedamo Belt. The plutonic rocks comprise hornblende gabbro and quartz diorite, and they have been identified at more than 50 localities. U-Pb dating of zircon from the quartz diorite using inductively coupled plasma-mass spectrometry yields an Early Ordovician age of ca. 480 Ma. Based on similarities in lithofacies and age, the plutonic rocks are correlative to the Kagura Igneous Rocks of one of the basement units in the South Kitakami Belt. This correlation may help in deducing the mechanism (e.g., large sinistral strike-slip fault) of emplacement of the tectonic blocks into the accretionary complexes of the Nedamo Belt.
The upper Miocene to Pleistocene Shimajiri Group, composed mainly of siltstone and sandstone, occurs on some of the Ryukyu Islands in southwestern Japan. This group is thought to have been deposited in a shelf-slope to fore-arc basin setting before the accumulation of Pleistocene coral reef deposits (Ryukyu Group). We investigated the calcareous nannofossil biostratigraphy of the Shimajiri Group in the Offshore Okinawa 1-x well, drilled near the northeastern margin of the Okinawa-Miyako Submarine Plateau, Ryukyu Islands. A sample from 280 m, at the base of Ryukyu Group, contains Gephyrocapsa parralella, which first occurred at 0.987 Ma. Discoaster quinqueramus and D. berggrenii, which define both the top and bottom of the calcareous nannofossil zone NN11, are found throughout the Shimajiri Group, consistent with a late Miocene age between 8.10 Ma and 5.53 Ma. A large sedimentary gap between the Shimajiri and Ryukyu groups suggests that part of the Okinawa-Miyako Submarine Plateau may have been above sea level during the early Pliocene, implying deposition of the Shimajiri Group here was completed earlier than in other regions. This study provides key constraints on the Cenozoic geological history and phylogeography of the Ryukyu Islands.
秋田県湯沢市蓮台寺の採石場に露出する厚さ10 mを超える帰属不明の礫層(蓮台寺礫層)についてその産状を記載し,起源について議論した.この礫層は,構成粒子の大きさや種類(色調)などの違いによって,15枚を超える多数の,層状に重なる礫質堆積物からなる.いずれも,カオリン鉱物に富む礫を主体とし,ラハール堆積物の特徴を示す.湯沢地域に分布するほかの地質単元との層位関係は,この礫層が2 Ma以降に堆積したことを示唆する.また,古流向はこれが南東から来たことを示唆し,礫を構成する鉱物が熱水変質起源であることから,その給源は,湯沢市街地南東の三途川カルデラ内にあって熱水変質起源のカオリン鉱物が記載されている地域に求めることができる.蓮台寺礫層を構成する多数のカオリン鉱物に富む礫質堆積物は,その給源において斜面崩壊もしくは水蒸気噴火で変質岩の岩屑が繰り返し生じて流出する時期があったことを示唆する.
御荷鉾緑色岩類は,後期ジュラ紀に形成され,前期白亜紀にアジア大陸東縁へ付加された地質体だと考えられている.一方,御荷鉾緑色岩類と北部秩父帯の柏木ユニットは,岩相,変形構造,地質構造,変成作用において,密接な関係があることが指摘されている.両地質体の初生的な関係の理解は,後期ジュラ紀〜前期白亜紀のパンサラッサ海(古太平洋)やアジア大陸東縁の沈み込み帯のテクトニクスの解明につながるため重要である.本巡検では,御荷鉾緑色岩類と柏木ユニットの海洋性岩石である玄武岩類およびチャートに着目し,両地質体の類似点と相違点について観察を行う.また本巡検地では,御荷鉾緑色岩類の上位に柏木ユニットが衝上する大高取山クリッペや堂山クリッペが提唱されている.これらクリッペについて,両地質体の岩相上の特徴から再検討を行う.さらに小規模に点在して分布する帰属不明な蛇紋岩についても観察を行う.
Spherical iron-oxide concretions are found in the Jurassic Navajo Sandstone in Utah, USA. Based on image analysis of more than a thousand concretions, we found that: (1) the spatial distribution resembles a random distribution, with deviation from the random distribution occurring as concretion clusters; (2) the spacing between concretions is much larger than the concretion sizes; (3) the width of the size distribution increases with increasing concretion size; and (4) the volume fraction of concretions is constant, irrespective of size. These characteristics can be explained by repeating cycles of CaCO3 dissolution and precipitation, the precursor material of Fe-oxide concretions. In numerical simulations, the width of the size distribution did not depend on the input parameters, including pH and supersaturation.
北部北上地域でAptian期の火成活動に伴ってできたとされる,鉱脈群について応力解析を行った.データ取得範囲はジュラ紀付加体中にあるものの,上部白亜系久慈層群の基底の近傍にあり,また同層群が緩傾斜なので,この鉱脈群の形成後の傾動は無視できる.解析結果と既存の地質情報から,NNW-SSE次いでNW-SE方向の引っ張り応力が,Aptian期のうちに働いていたことが判明した.
現行堆積作用・堆積物の研究は過去数十年で大きく進歩した.最近の一つの進展は気象・地質イベントに関連して形成された堆積物とその堆積過程の研究である.気象イベントに関連したイベント堆積物の理解は国際的な物質循環と地層形成の研究プロジェクトにより大きく進展した.一方,地質イベントに関しては2004年スマトラ沖地震・津波や2011年東北沖地震・津波後の調査研究がイベント堆積物とその堆積過程の研究に大きな進展をもたらした.今後の現行堆積作用・堆積物の研究の進展のためには,堆積物の地質学的な研究と現場観測,実験,シミュレーションの統合が重要である.
守屋層は北部フォッサマグナ南縁部の中新世古環境や伊豆弧衝突に関連した地殻運動を記録していると推定されるが,その上部を構成する変質火山岩類の年代がよくわかっていなかった.今回,守屋層最上部の唐沢川酸性火山岩部層から15.5±0.2<sub>(2σ)</sub> MaのジルコンU-Pb年代を得た.この結果より,本部層の火山岩類の形成は15.5 Ma頃だったと考えられる.守屋山地域の火山活動はN8帯の下限年代である17.0 Ma以降に始まり15.5 Ma頃まで継続したと考えられ,15.5 Ma以降も火山活動が継続していた可能性はある.守屋層は下部の砕屑岩部分が北部フォッサマグナの内村層に対比されているが,上部の火山岩類も含む守屋層全体が内村層に対比可能と考えられる.この火山岩類の活動は設楽火山岩類の主要活動(約15-13 Ma)に先立って起こったが,設楽火山岩類の一部である津具火山岩類の活動とは同時期だった可能性がある.
ジオパーク秩父は1市4町(秩父市,横瀬町,皆野町,長瀞町,小鹿野町)をエリアとしており,2011年に国内で15番目の日本ジオパークに認定された.ジオパークのメインテーマは「大地の守人を育むジオ学習の聖地」であり,東京から比較的近いこともあり明治時代より多くの研究者がこの地を訪れて,近代地質学を発展させた地学の歴史が盛り込まれているとともに,宮沢賢治の足跡を辿ることもできる.また,秩父札所34ヶ所観音霊場などに代表される寺社には,人々が特異な地形に神秘を感じ,大切に守り伝えてきた特別な場所が数多くあり,ジオパーク秩父の見どころともなっている.公開されているジオサイトも札所の数と同じ34ヶ所に絞られており,そのほか文化・歴史サイト,生態サイト,眺望サイトが選定されている.この巡検では,関東を代表する三波川帯,秩父帯(メランジュ),および中新統秩父盆地層群の代表的なジオサイトを見学するとともに,盆地に広がる中新統と,それを取り巻く山々を構成する基盤岩の地形,および両者の境界をなす不整合と断層を,札所と和銅遺跡で見学する.ジオと文化・歴史のつながりを感じることができるコースでもある.
十和田火山カルデラ形成期の約21 cal kyr BPに発生した噴火エピソードMについて,給源近傍と遠方における噴出物の産状を記載するとともに,岩石学的特徴を用いた両者の対比を行い,この噴火の特徴と推移について考察を行った.噴火エピソードMの噴出物は,給源近傍に分布する雲井火砕流堆積物及びカラタマ沢軽石,給源遠方に分布する米田テフラ(下位より米田1軽石と米田2火山灰に細分)からなる.岩石学的特徴の類似から,雲井火砕流堆積物とカラタマ沢軽石は,米田2火山灰と同時期の堆積物と判断される.噴火エピソードMでは,最初にプリニー式噴火が発生し,米田1軽石が降下堆積した.その後まもなく,湖水の影響を受けた断続的な水蒸気プリニー式噴火へと移行したと推定され,この噴火により米田2火山灰とカラタマ沢軽石が降下堆積した.この噴火では噴煙柱が部分崩壊して火砕流が発生し,給源近傍に雲井火砕流堆積物が堆積した.
山口県長門-豊北地域の後期白亜紀カルデラの形成史解明のためにそれを構成する阿武層群の火山層序・構造・岩石記載・化学組成および関連貫入岩類の産状・貫入関係について記載した.当地域の阿武層群は下位の豊北層と上位の長門層に区分される.豊北層は堆積岩優勢層で,下位から粟野礫岩砂岩部層,宝蔵山火山礫凝灰岩部層,大藤山凝灰岩部層および阿惣川頁岩凝灰岩部層に区分される.一方,長門層は乾陸上に噴火した流紋岩質火砕岩を主とし,下位から大坊川流紋岩凝灰岩部層,熊野岳流紋岩凝灰岩部層,国広安山岩部層および船越流紋岩凝灰岩部層に区分される.火山岩類は基盤の関門層群と正断層や境界岩脈を隔てて接し,珪長岩・花崗岩類・閃緑岩類に貫かれる.豊北層と長門層は,東西方向に伸びた長さ34 km,南北14 kmを超えるグラーベン・カルデラを構成する可能性が高い.また両層のイグニンブライトは沈み込み帯に関連した化学組成を有する.
Fe oxide Liesegang bands have often been observed in sedimentary and igneous rocks, and they are formed during weathering and alteration by water-rock interactions. In this study, micro-X-ray fluorescence (μ-XRF) mapping was used to study the Fe bands in an Fe oxide concretion from the Jurassic Navajo Sandstone in Utah, USA, to estimate the duration of their formation. Most of the peaks in Fe concentration are steeper on the inner side than on the outer side, which indicates a supply of ferrous ions (Fe2+) from outside the concretion. The precipitation of Fe oxide was controlled by pH buffering that resulted from a reaction between acidic water and alkaline pore water that formed through the dissolution of an earlier calcite concretion. The reaction rate within the Fe oxide concretion was estimated from the width of the Fe peaks and the expected diffusion coefficient for Fe through the rock matrix, and it was found to be no more than years to decades-faster than previously estimated. This demonstrates that μ-XRF mapping is a useful technique to extract quantitative information about water-rock interactions from rocks.
Two dead specimens of the precious coral Pleurocorallium elatius were obtained from the sea-bottom surface in submarine depressions at ~350 m water depth off Zanpa Cape, Okinawajima Island. Three samples were dated by 14C analysis, and yielded ages of 32,824-31,709 and 33,685-32,911 cal BP for one specimen and 20,480-20,060 cal BP for the other. These ages suggest that there was almost no deposition of sediment for an extended period in the depressions, which are interpreted as obstacle scours on the basis of their acoustic features. The obtained ages are the oldest known for dead precious corals, suggesting that favorable chemical conditions in the sea water facilitated long-term preservation of dead coral.
A conodont fauna characterized by Streptognathodus species was recovered from a limestone block (previously called Ōboradani Formation) of the Ōtani (=Ohtani or Otani) Formation belonging to the Hida Gaien belt distributed in the Kuzuryu area, Fukui Prefecture, central Japan. The fauna consists of Streptognathodus corrugatus, S. elegantulus, S. excelsus, S. gracilis, Idiognathodus sp., Gondolella bella, G. cf. elegantula and G. cf. pohli. These streptognathodids have a wide geographic distribution and indicate a middle-late Kasimovian (Late Pennsylvanian) age, which is slightly older than the Gzhelian (latest Pennsylvanian) age infferred from fusulinid fossils in previous studies. Thus, the limestone block of the Ōtani Formation probably contains the Upper Pennsylvanian carbonate succession.
新島の露頭と新島地震観測井コアを調査し,姶良カルデラの後カルデラ火山活動と環境の変遷を明らかにした.姶良カルデラは当初,淡水湖であったが,14.5 cal ka BP頃に海水が流入して内湾に変わった.海進前の淡水湖にはラハールなど様々な粒子濃度の密度流が繰り返し流入し,北東隅の若尊火山から噴出した流紋岩質水底密度流がカルデラ内に堆積し,桜島の爆発的噴火で生じたテフラが新島周辺に堆積した.若尊火山と桜島火山の活動は海進の直前に穏やかになったが,13 cal ka BP頃に若尊火山で新島軽石が大量に噴出してカルデラが形成され,さらに小規模ながら新島南部軽石が噴出した.また,新島軽石と新島南部軽石の噴火の合間を縫って桜島でも大規模な爆発的噴火が発生し桜島薩摩テフラが噴出した.その後若尊カルデラの活動は静穏となったが,桜島火山は爆発的噴火と溶岩流出を繰り返し,姶良カルデラ底に噴出物をもたらした.
東京都湾岸部の沖積低地(東京低地)の16地点で常時微動観測を行い,各地点で地盤の平均S波速度とH/Vスペクトルのピーク周波数すなわち地盤の共振周波数を推定した.これにより,表層の軟弱層が厚いと共振周波数が低くなることが示された.1/4波長則を適用して地盤の共振周波数を特徴付けるS波速度不連続面の深さを算出したところ,ばらつきは大きいものの,検討した13地点中7地点において,従来物性境界と考えられてきた七号地層/有楽町層境界よりも下位の,七号地層の砂泥互層中に位置することが示された.この不一致の原因として,七号地層の砂泥互層中や基底礫層上面の物性境界が影響を与えている可能性が考えられ,H/Vスペクトルピーク周波数のばらつきは砂泥互層を構成する蛇行河川堆積物やエスチュアリー堆積物の不均一性に由来すると考えられる.
北海道の津軽海峡沿岸域において津波堆積物調査を実施した結果,4地点で泥炭層中に挟在する6枚のイベント堆積物を見出した.イベント堆積物の形成年代は589~516 cal yBP,734~670 cal yBP,1656~1538 cal yBP,1745~1639 cal yBP,2401~2265 cal yBP,2771~2618 cal yBPである.イベント堆積物の供給源,確認地点の現海岸線からの距離,発生頻度から総合的に判断すると,イベント堆積物は津波起源の可能性がある.イベント堆積物はいずれも隣接地域の既知の津波イベントと年代的に近接する.一方,年代の新しいイベントは13~15世紀頃と推定され,北海道から東北地方の太平洋沿岸域で広く知られる17世紀の津波イベントは北海道津軽海峡沿岸に堆積物を残していないことが示された.このことは,17世紀に発生した津波の波源域を考える上で,拘束条件の1つとなる可能性がある.
An exotic block of garnet-bearing schist has been found at the boundary between the Early Triassic Takinosawa Unit of the Nedamo Belt and the Early Jurassic Nakatsugawa Complex of the North Kitakami Belt, NE Japan. This is only the second discovery of exotic schists in the Nedamo Belt; the previously identified schists occur at the boundary between the Takinosawa and early Carboniferous Tsunatori units of the Nedamo Belt. The garnet-bearing schist is characterized by a mineral assemblage of garnet + phengite + epidote + albite + quartz + titanite. Phengite with Si of 6.51-6.66 atoms per formula unit (O = 22) and the mineral assemblage suggest that the schist underwent high-P/T metamorphism prior to emplacement into its current position. The schist yields a phengite K-Ar age of ca. 290 Ma (late Paleozoic), suggesting a correlation with high-P/T schist of the Yamagami Metamorphic Rocks from the Motai-Matsugadaira Belt. This finding supports the extension of late Paleozoic high-P/T metamorphic rocks (i.e., the Renge Belt of SW Japan) to NE Japan.
訂正
地質学雑誌127巻11月号掲載の藪田ほか論文(p.673-679)において,著者連絡先情報の記載に不備がありました.ここに訂正し,深くお詫び申し上げます.
(地質学雑誌編集委員会)
p.673 左段
(誤)Corresponding author: S. Yabuta,
aaaaaa@aaaaa.jp
(正)Corresponding author: S. Yabuta,
yabuta.sakurako@f.mbox.nagoya-u.ac.jp