地質学雑誌
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三浦半島北部の上総層群の地質と冷湧水性化学合成化石群集
野崎 篤 宇都宮 正志
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2022 年 128 巻 1 号 p. 313-333

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抄録

房総半島,三浦半島,多摩丘陵などに露出する後期鮮新世-中期更新世の前弧海盆堆積物である上総層群は,鮮新世以降における南関東の地質や地形の発達過程を理解する上で重要な地層である.なかでも三浦半島北部の上総層群下部-中部では近年,岩相層序学的研究および,広域凝灰岩層,石灰質ナノ化石,古地磁気,有孔虫化石の酸素安定同位体比などを用いた年代層序学的研究が盛んに行われている.その成果により,本地域の上総層群では,本邦でも有数の極めて詳細な上部鮮新統-下部更新統の層序が確立しつつあり,それによって房総半島において,いわゆる黒滝不整合により欠落している層準のほぼ連続的な地質記録が残されていることが明らかにされている.さらに本地域の上総層群から数多く産出する,主に二枚貝化石からなるメタン冷湧水性化学合成化石群集についても詳細な記載が行われてきており,プレート境界周辺の海洋底からのメタン湧出が,地質時代における地球環境に与えた影響を評価するうえで重要である.本コースでは,三浦半島北部の上総層群中部-下部を観察し,層序学的研究および,産出する化学合成化石群集についての研究成果について紹介する.

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© 2022 日本地質学会
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