地質学雑誌
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巡検案内書
琵琶湖西岸に分布する後期白亜紀花崗岩体と岩脈類
多賀 優 貴治 康夫杉井 完治
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2023 年 129 巻 1 号 p. 519-531

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抄録

琵琶湖南部周辺には中生代後期白亜紀の花崗岩体が環状に分布しており,それに囲まれて湖東(ことう)の平野部を中心に湖東流紋岩質火砕岩類が分布している.これらは,後期白亜紀に巨大コールドロン(琵琶湖コールドロン)を形成した給源マグマとその噴出岩と考えられる.本巡検地域はその西南部に位置する.

本巡検では,琵琶湖南湖(琵琶湖大橋以南)西岸の大津市-京都市地域の後期白亜紀に活動した比叡(ひえい)・仰木(おおぎ)・大原(おおはら)・霊仙(りょうぜん)の各花崗岩体と比叡花崗岩に貫入している2種類の岩脈を見学する.4岩体はそれぞれ異なる岩石学的特徴を有し,花崗岩体の火成活動は古期(比叡岩体と大原岩体:100 Ma前後)と新期(仰木岩体と霊仙岩体:約75-70 Ma)に分かれる.新期の花崗岩は琵琶湖コールドロンの火砕活動の給源マグマの一部であり,比叡花崗岩中の岩脈はその最外縁部を画する.一方,古期花崗岩の岩石学的性質は,琵琶湖北東方向の貝月山(かいづきやま)花崗岩や近畿中央部の領家花崗岩との類似性がある.本巡検において,琵琶湖西岸地域でのこのような後期白亜紀火成活動の一端を紹介する.

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