2024 年 130 巻 1 号 p. 313-328
鹿児島県種子島北部の,熊毛層群門倉岬層が分布するとされた地域の層序,地質構造,そして地質年代を検討した.結果,内陸部に分布する門倉岬層は逆断層により4つの構造ユニットに区分されることが判明した.その構造的最上位の構造ユニットから産出した放散虫化石によると,その年代は中期始新世後期(放散虫化石帯RP16帯)にあたることが判明した.一方,従来門倉岬層が分布するとされていた海岸部に分布する地層の年代は,放散虫化石の検討の結果,前期漸新世後期(放散虫化石帯RP21a帯下部)にあたることが判明した.その岩相も考慮すると西之表層が本地域に分布していることが判明した.このことは,熊毛層群の分布域や構造は,今まで言及されてきたものより遥かに複雑であることを示唆する.今後熊毛層群の地質を明らかにするためには,本島中部や南部においてもより詳細な地質調査にもとづく層序や地質構造,年代の検討が不可欠である.