2024 年 130 巻 1 号 p. 279-295
山形県南西部の朝日山地と飯豊山地の間に分布する中新統は,日本海拡大に関連した東北日本のリフティングと地殻運動の証拠を記録している.この地域では,2300~2200万年前(23~22 Ma)に発生した大規模火砕噴火,18 Ma前後の弧内リフトの発達,17.5 Ma頃の火山活動,17.0~16.5 Ma頃の温暖期における海進とそれとほぼ同時に起こった褶曲,その後の深海化と後期中新世における海退といった,日本海拡大期とその後に発生した様々な地質学的現象の証拠を認めることができる.また,古地磁気の研究によって,リフト発達後に地殻のブロック回転が起こったことも明らかにされている.この度,日本地質学会学術大会(第131年大会)が38年ぶりに山形で開催されることになり,それにあわせてこの地域での巡検が企画された.この巡検ではリフティングとその後の地殻運動を記録する地層・岩石などを観察する.加えて,この巡検では2022(令和4)年8月初旬に発生した記録的豪雨による災害の現場も訪ね,豪雨による災害について地質と関連づけながら理解を深める.