地質学雑誌
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論説
愛媛県東温市滑川渓谷の中部中新統石鎚層群高野層と初期の石鎚火成活動
成田 佳南 宮本 真愛楠橋 直谷 健一郎下岡 和也高橋 俊郎齊藤 哲
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2024 年 130 巻 1 号 p. 419-440

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抄録

四国北西部に分布する石鎚層群は,日本海の拡大と関連して生じた中期中新世の火成活動により形成され,この西南日本弧における一大事件に関する情報を提供すると考えられるが,同層群を形成した火成活動の初期の様子はよくわかっていなかった.そこで本研究では,愛媛県東温市滑川渓谷を調査地域として,同層群最下部を構成する高野層の調査をおこなった.調査地域の高野層は,基底部の礫岩を除きすべて柘榴石を伴う火山砕屑岩類からなる.下部は溶結した火山礫凝灰岩で,その上位に漸移部を挟んで高温石英を多く含む結晶質凝灰岩からなる上部が重なる.全岩および柘榴石の化学組成分析によれば,同層は組成の異なる少なくとも2種類の流紋岩質マグマとより苦鉄質なマグマが順に活動し形成されたと考えられる.その後小休止を経て,安山岩質な黒森峠層の形成が始まった.U–Pb年代によれば,これらすべては14.5 Ma頃の短期間に起こった.

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© 日本地質学会
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