地質学雑誌
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論説
砕屑性ジルコンのU–Pb年代測定による下部-中部中新統田辺層群の堆積年代の制約と応力場への示唆
安邊 啓明 星 博幸羽地 俊樹佐藤 活志仁木 創太平田 岳史岩野 英樹檀原 徹
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2025 年 131 巻 1 号 p. 59-70

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抄録

前期–中期中新世の西南日本前弧域の応力史解明には前弧海盆堆積物の年代情報が必要である.紀伊半島南西部に分布する下部–中部中新統田辺層群の堆積時期制約のため,砕屑性ジルコンのU–Pb年代を測定した.221粒子のコンコーダントな年代値のうち,最若粒子年代値は約19.4 Maであり,田辺層群の堆積年代の上限はこれより若いと考えられる.浮遊性有孔虫化石が示唆する堆積時期(約16.3 Ma以降)より若い粒子は含まれなかった.紀伊半島周辺で噴出物を伴う火山活動が広範囲で活発化した約15 Maより若いジルコンが含まれないことから,田辺層群はそれ以前の堆積物であると考えられる.田辺層群の堆積時期には後背地周辺の火山活動が低調だったために,砕屑性ジルコンの最若年代値と実際の堆積時期が乖離した可能性がある.以上の結果は,田辺層群中の砕屑岩脈が記録する東西引張応力が約15 Ma以前に働いたことを示唆する.

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