九州中部には,北東―南西方向に延びる黒瀬川帯が分布し,シルル紀以降の化石群が産出する.特に,祇園山層は,日本のシルル~デボン系の‘模式地’として有名であり,豊富な化石群を産出する.デボン系山出(やまいで)層は,2000年代に入って命名され,本邦最西端の古鱗木の化石産地でもある.石炭系柿迫(かきさこ)層は,暴風時波浪限界水深より大きい深度で堆積した地層で,生物砕屑物を含む多様な岩相からなる.本巡検では,まず祇園山層の露頭の観察や大型・微化石試料の採集をおこない,堆積環境について考察する.続いて,デボン系山出(やまいで)層にて,古鱗木をはじめとした植物化石の収集と岩相と植物化石の保存・産状を観察する.最後に,石炭系柿迫層にて,様々な岩相の石灰岩を観察し,酸処理によって微化石が抽出できる岩相の一例を紹介する.