2025 年 131 巻 1 号 p. 261-276
北部九州地域には,白亜紀の大規模火山弧火成活動に関連する花崗岩バソリスとそれに随伴する苦鉄質岩体(斑れい岩〜閃緑岩)が分布している.白亜紀北部九州バソリスは複数の小規模深成岩体から構成される複成バソリスであり,その活動年代は115–90 Maである.これらバソリス構成要素のうち,尺岳西麓に分布する尺岳閃緑岩岩体は高Mg安山岩マグマに由来する高Mg閃緑岩という特異な岩石であり,花崗岩質マグマ生成機構に関する情報や当時のテクトニクス場の情報を抽出することができる.また,尺岳周辺地域に分布する火成岩類(尺岳閃緑岩岩体・斑状細粒トーナル岩岩体)は,白亜紀湖成層である脇野亜層群に貫入し,白亜紀火成活動における地殻浅所でのマグマの挙動,例えば,マグマ供給システムやマグマの上昇・定置過程を確認できる.今回の巡検では,北部九州バソリスを構成する特異な小規模深成岩体に着目し,その特徴(岩相)とバソリス活動に伴う地下浅所におけるマグマの挙動を把握する.