2025 年 131 巻 1 号 p. 279-293
この野外巡検では,特に海底扇状地環境における堆積プロセスに焦点を当て,熊本県天草上島と宇土半島に分布する上部白亜系姫浦層群の堆積相を観察する.姫浦層群はサントニアンからカンパニアン後期にかけて堆積した地層であり,花崗岩,蛇紋岩,変成岩を含む様々な基盤岩の上に不整合に重なる砂岩,泥岩,礫岩およびそれらの互層から構成されている.本巡検の観察地点では,河川,内湾から深海の海底チャネル・自然堤防システムに至るまでの環境の堆積相の特徴を詳細に観察することができる.本巡検で特筆すべきは,露出の良い海岸露頭によって,保存状態の良い海底チャネルや自然堤防の構造など,大規模な海底扇状地の特徴が認識できることである.これらの露頭は,土砂重力流プロセスとチャネル・自然堤防の地形発達に関する重要な情報を提供している.また,西南日本における後期白亜紀の堆積盆ダイナミクスについても重要な示唆を与える.