地質学雑誌
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ナホトカ号重油流出事故による北陸沿岸の環境汚染とバイオリメディエーション(速報)
田崎 和江沢野 伸浩永坂 正夫青木 歩松本 和也西田 佐織俵 健二上島 雅人
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1997 年 103 巻 2 号 p. VII-VIII

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抄録
1997年1月2日,約1万9千klのC重油を積んだロシア籍タンカー・ナホトカ号が隠岐島沖で分断し沈没した. 船首部は北西の強風を受け漂流した後, 同月7日,福井県三国町沖で座礁し, 深刻な海洋汚染を北陸沿岸にもたらした. 北陸沿岸ではこの1か月間で海水, 砂を含む約3万klの重油が回収されたが, 重油漂着量の多かった三国町や能登半島では, 2月17日現在でも各地で重油回収作業が続いている. 
C重油は, 海水を80%以上含み, エマルジョンになる. 含水量が多くなるにつれ油の色は黒色→褐色→黄褐色へと変化し, 同時に粘性も高くなる. 比重も海水中の微粒子を取り込むと, 1より大きくなり, オイルボールとなって沈降する. 今後, 重油が生態系に与える影響について長期的な追跡調査が必要である. また本研究グループでは回収された砂混じりの重油を分離する方法を試みている, 一方, C重油を分解するバクテリアやエマルジョンの分解過程を観察し, その実態を明らかにしつつある, C重油が北陸沿岸に漂着してからの調査結果および進みつつあるバイオリメディエーションの実態をとらえたので報告する.
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© 日本地質学会
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