地質学雑誌
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本邦古生界からのクセナカントゥス目サメ類歯化石の発見
後藤 仁敏兼子 尚知鈴木 雄太郎大倉 正敏
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2000 年 106 巻 11 号 p. 737-742

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抄録

南部北上帯に属する宮城県本吉町鹿の子南方の林道において, 上部ペルム系・千松層(Changhsingian)上部の黒色塊状泥岩から, 古生代の淡水性サメ類であるクセナカントゥス目のOrthacanthus sp.の歯の咬頭の化石が発見された.標本は, このサメの歯の歯冠を構成する2本ある側咬頭のうちの1本で, 細長く, 歯頚側より4分の1の位置から内側または外側に傾斜している.唇側面はほとんど平面で, 2つの切縁をそなえる.切縁には鋸歯があり, 片側に28,もう片側は中央部のみに16の鋸歯が数えられる.咬頭の表層は光沢のある黒色のエナメロイドによって構成されている.咬頭の全高は12.4+mm, 最大幅は2.1 mmであった.本論文は, ペルム紀後期の地層からのOrthacanthus属の最初の報告であるとともに, わが国の古生代の地層からの淡水性すなわち陸生脊椎動物の化石の最初の報告でもある.本発見は日本の古生界から魚類だけでなく, 両生類や爬虫類を含めた陸生脊椎動物の化石が発見される可能性を示唆している.

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