中央構造線活断層系三野断層は, 徳島県三野町上野において中位段丘面上に逆向き低断層崖を伴って溝状凹地を形成しており(岡田, 1970;中田ほか, 1999), 凹地南縁の低断層崖基部でトレンチ調査を行った. トレンチ壁面の地層は上部層と下部層に区分される. 上部層は扇状地性の礫層と耕作土(1~6層)である, 最上位の1層は現在の耕作土で, 2~3層は旧耕作土(190±40
14CyBP)であり, 4~6層が扇状地性堆積物である. 東側壁面の4層は10~13世紀, 西側壁面の4~6層は11~14世紀末に相当する
14C年代を示す. また, 西側壁面の6層とこれを直接覆う4層の境から14~15世紀以降と推定される羽釜の遺物が産出している. 下部層は溝状凹地に堆積した池の堆積物であり, F4断層(東側壁面ではF1断層に切られる)を境として南北で構造が異なる. 北側の下部層(1~VII層)は北側に急傾斜しているのに対して南側の下部層(A~H層)はほぼ水平な構造を示す. 1層は鬼界アカホヤ火山灰(約BC5,200年)であり, V層はBC7,300~7,000年の
14C年代を示す. 南側の下部の
14CC年代である. トレンチにはF1~F5断層が分布しており, 水平成分ではこれらはいずれも右横ずれ断層である. 上下成分ではF1断層は南側隆起の逆断層であり, F2断層は南側隆起の正断層である. これに対して, F3, F4断層は北側隆起の逆断層であり, F5断層は傾斜がほぼ鉛直で北側隆起の断層である. F1断層は急傾斜した下部層を切断し, さらに上部層の4層を切り, 3層に覆われる. F2断層は上部層の4~6層を切るが, 上部が人工改変により削られており, 3層との関係は明らかでない. F1断層の活動時期は4層堆積以降, 3層堆積前であり, 三野断層の最新活動時期は14~15世紀以降で190±40
14CyBP以前と推定される.
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