2000 年 106 巻 2 号 p. 136-150
陸棚堆積物にみられる貝化石層は, 古生態や堆積学的情報を含むため, 堆積環境の推定を行う場合に重要な役割をもつ.しかしその有用性を十分に評価した研究は少ない.北海道中央部の沼田町に分布する上部中新統~下部鮮新統幌加尾白利加層は, 主に砂泥質堆積物から構成され, 幌加尾白利加層上部は上方浅海化を示す内側陸棚の堆積環境と推定される.この堆積物にみられる貝化石産状を, 物理的リワークだけによって形成されたタイプ1と生物攪拌を被ったタイプ2の2つに区分した.その結果, 両タイプの産出数は上方浅海化とともに漸次増大する一方, タイプ1とタイプ2の産出比はほとんど変化しないことがわかった.つまり, 内側陸棚の環境内においては, ストームなどの物理的リワークの頻度は深い方から浅い方へと増大するが, 生物攪拌の程度は水深にかかわらずほぼ一定であったことが明らかになった.