抄録
東北日本の背弧側(新潟県北部)には, 鮮新世(約3 Ma)の主に安山岩質の溶岩および火砕岩からなる明神岩層が分布する.これら安山岩類の斑晶鉱物組み合わせ, 斑晶鉱物の化学組成, 全岩の主要・微量元素組成などの特徴は, 安山岩の組成変化の主な要因が, 斑晶鉱物の分別にあることを示唆している.しかし, 安山岩類のSrI値はSiO2量の増加とともに高くなり, NdI値は逆にSiO2量の増加とともに低くなる傾向を示す.このことは, これらの安山岩類は玄武岩質マグマからの単純な分別結晶作用によって形成されたものではないことを示している.これらのことから, 明神岩層の周辺に分布する漸新世の花崗岩質岩石と先第三系堆積岩(これらは新潟地域の上部地殻の主な構成岩である)の同化作用の影響について検討した.その結果, 安山岩類の化学組成および同位体組成の変化は, 玄武岩質マグマが花崗岩質岩石を同化しながら分別結晶作用したことによって説明されることが明らかにされた.