2001 年 107 巻 1 号 p. 26-40
日本海拡大時に西南日本ではどのような内部変形をしたのか.この問題に1つの手がかりを与えることができると考え, 四国北西部に分布する下部中新統久万層群において多重逆解法による小断層解析と, 堆積環境の再検討をおこなった.堆積環境に関しては, 久万層群の大部分が扇状地堆積物によって構成されることがあきらかになった.また, 小断層解析により6つの応力状態を識別することができた.検出された応力状態の1つは, 久万層群中に見られたハーフグラーベン構造を形成したものであると推定される.その応力状態は傾動補正を加えたものからのみ得られたものであるため, 久万層群の堆積盆は, グラーベン群によって形成されたと考えられる.またほかの1つは約15Maの岩脈群から推定される応力場と調和的であった.このことから, グラーベン群による堆積盆形成から, 岩脈群貫入期まで伸張テクトニクスが働いたと推定される.