地質学雑誌
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南大洋古海洋学 : 第四紀後期における表層水塊と生物生産量の時系列変動
池原 実
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2001 年 107 巻 1 号 p. 46-63

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抄録

南大洋および南極大陸を含めた南極冷却圏は, 周南極海流や巨大氷床が存在することによる気候冷却機関として気候システムの中で非常に重要な位置を占めている.最近の深海堆積物を用いた南大洋における古海洋変動研究は, 最終氷期の表層水温がCLIMAPによる推定よりも大きく低下していることや, 南極極前線および海氷縁などを含む表層水塊が氷期-間氷期スケールで南北にシフトしていることを明らかにした.また, 極前線より北側の亜南極表層水域では, 氷期にシリカベルトが北上すること, および, 大気を経由したダスト供給量が増加したことによって, 一次生産量が増大し生物ポンプが強化されていたようだ.逆に, 極前線の南側では氷期に海氷分布域が拡大したことによって表層が成層化したため, 中・深層から大気へのCO2放出が抑制されていた.これらの南大洋における諸現象は, 大気CO2濃度を変化させることによって, グローバルな気候変動に大きく寄与していたと考えられる.

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