2001 年 107 巻 11 号 p. 711-721
古応力場を推定する小断層解析法である共役断層法には原理的欠陥があるため, これまでの研究結果を見直す必要が出てきた.そこで見直しをすすめる上での指針とするべく, 新潟県新津丘陵において共役断層法と, 別の解析法である多重逆解法での結果を比較した.多重逆解法により, 北部地域では水平伸張, 南部地域では水平圧縮という結果が得られた.金津地域では時代の異なる応力を分離した.この地域では両方法の解の一つが一致した.これは, 実際に共役断層の卓越する地域では共役断層法がやはり有効であることを示している.一方で, 多重逆解法で得られた別の解は共役断層法では認識できていない.小断層変位による全体歪み量を累算すると, 平面歪みからは少し外れた値が得られた.このことは, 共役断層法が完全に成り立つためには非常に厳しい歪み条件が必要なことを示している.