抄録
盛岡東南地域の早池峰帯の赤色チャートからデボン紀コノドントが発見された.早池峰帯は変形した砕屑岩と緑色岩類からなる付加体で, 同時に北部北上帯と南部北上帯との境界帯を構成している.今回産出したコノドントはPalmatolepisを特徴とし, 後期デボン紀(前期ファメンヌ世)を示準する.これは, 日本列島において化石によって時代が決定されたデボン紀海洋性岩石の初めての報告である.コノドントを産出したチャートは, 層状鉄鉱床を伴い, 緑色岩中のレンズ状岩体の産状を示す.緑色岩の化学分析の結果, プレート内アルカリ玄武岩とMORB~プレート内ソレアイトの二つのタイプが認識された.特に, 層状鉄鉱床にともなうソレアイトは, N-MORB~P-MORBにまたがる組成を示す.早池峰帯の緑色岩は, 熱水活動の活発な海洋底および海洋島の火山活動によって後期デボン紀に形成されたと考えられる.