抄録
日本海南部の隠岐トラフ南東縁部で採取されたKT96-17 P-2コアには5枚の火山灰層が挟在する.これらの火山灰層について火山ガラスの形態や主成分化学組成,および鉱物組成を調べた結果,ATとK-Ahの両層準の間に鬱陵島起源の降下火山灰層を2枚見い出し,それらの火山ガラスの主成分組成が互いに異なることを明らかにした.日本海の古海洋学的研究において重要な年代指標とされるU-Okiはこれらが混同されている可能性があり,従来U-0kiの対比候補とされていた鬱陵島の醗陵降下テフラU-2だけではなくU-3やU-4も広域に分布した可能性が指摘される.また,本コアに挟在するKsPの直上ならびに直下の層準から採取した浮遊性有孔虫殻を試料としてAMS 14C年代を測定した結果,約18,000 yr BPの年代値を得た.KsPの噴出年代は約20,000~22,000cal yrBP程度と見積もられる.