地質学雑誌
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福島県船引町周辺に分布する阿武隈花尚岩類の地質と岩石記載
亀井 淳志高木 哲一
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2003 年 109 巻 4 号 p. 234-251

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抄録

福島県船引町周辺には阿武隈花崗岩類が分布し,岩相は斑れい岩類~花崗岩類におよぶ.これらの岩石は斑れい岩類,古期花崗岩類(長屋岩体・鹿山岩体・石森岩体),新期花崗岩類(青石沢岩体・三春岩体・初森岩体)に区分でき、この順に貫入する.古期花崗岩類は角閃石を含み弱い面構造を有するか,新期花崗岩類はカリ長石斑晶や白雲母を含み多くが塊状を呈する.花崗岩類は全てカルクアルカリ系列に属し,火山弧に産するI-type花崗岩の化学組成を有する.一方,斑れい岩類はソレアイト系列に属する.各花崗岩休および斑れい岩類は,バーカー図などにおいてそれぞれ異なる化学的性質を示す.また,長屋・鹿山・三春・初森の各岩体は約0.2~1.O×10-3SI unitの低い帯磁率を示すが,石森・青石沢の各岩体は約1.0~30.0×10-3SI unitの高い帯磁率を示す.斑れい岩類の帯磁率は約30.0~60.0×10-3SI unitとさらに高い.これら深成岩類の化学的性質および帯磁率の違いは,それぞれの岩体が異なるマグマから固結したことを示唆する. 花崗岩類の成因について,微量元素斑成による部分融解モデルの検討を行った.その結果,本地域の花崗岩類のマグマは,玄武岩質下部地殻が融解し,角閃石もしくは斜長石+ザクロ石を含む残存固相を形成しつつ発生したと判断された.

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